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TORENDIA

米

本文約21,900字 ・ 読了時間 約44分

あらすじ(AIが作成しました)

重労働の田植えに追われる浩平一家の日常を描く。長男や親が過酷な作業に従事する中、子供たちは泥遊びで叱られながらも食糧難に直面する。やがて米の供出調査の日が訪れ、困窮する家計を守るため、母親のおせきは検査員に対して必死に虚偽の申告を行う。

犬田卯

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一

三間竿の重い方の鋤簾を持って行かなければならぬ破目になって、勝は担いでみたが、よろよろとよろめいた。小さい右肩いっぱいに太い竿がどっしりと喰いこんで来て、肩胛骨のあたりがぽきぽきと鳴るような気がする。ばかりでなく二足三足とあるき出すと、鋤簾の先端が左右にかぶりを振って、それにつれて竹竿もこりこりと錐をもむように肩の皮膚をこするのだ。勝は顔中をしかめながら亀の子のように首をすくめて、腰で歩いた。

「愚図々々しているから、そんなのに当るんだで。」

あとから軒先を出た母親のおせきが見かねるように言って、そのよたよたした勝の恰好に思わず微笑した。

軽い方の鋤簾は、股引を穿いたり手甲をつけたり、それからまた小魚を入れるぼて笊を探しあぐねているうち、兄の由次に逸早く持って行かれてしまったのである。勝からいえば自分にあてがわれたその股引と手甲が、ことに股引が――それは昨秋東京の工場へ行った長兄がそれまで使用していたもので、全くだぶだぶで脚に合わず、上へ引っ張ってみたり下の方で折り曲げてみたり、ようやくのことで穿いたというような理由で、それで由次に遅れを取ってしまったので、

「由兄の野郎ずるいや、あとで見るッちだから。」勝はそんなことを三度も由次の後姿に向って浴びせかけたのだったが、こんどは母親に突っかかった。

「俺に股引こしらえてくれねえからだ。こんなひとのものなんど……」

「ひとのものでも自分のものでも、この野郎、それ本当の木綿ものなんだど。きょう日、スフの股引なんど、汝らに穿かせたら半日で裂らしちまァわ。」

おせきは籠の中へ大きな弁当の包みや、万一の用意に四人分の蓑をつめこんで、これまたよろめくように背負い、そして足ばやに勝に追いついて一言の下にたしなめると、やがてすたすたと追い抜き、道の先の方に見える由次や夫に遅れまいと足を早めた。

勝は歯ぎしりして腰を落し、両の手で竹竿を支え上げるようにして母に抜かれまいとするが、そうすると鋤簾の奴よけいにぶらぶらとかぶりを振って、ともすれば、小さい勝の身体を道傍へ投げとばしそうにする。

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