畳まれた町
本文約3,300字 ・ 読了時間 約7分
あらすじ(AIが作成しました)
ピストルの音を耳にした探偵は、賑やかな都会の市街や露路を調査するが、道行く人々を犯罪者と見なしてしまい捜査に行き詰まる。やがて訪れた遊園地で、物が巨大化する奇妙な光景に困惑する中、倒れた兵隊の姿を発見する。しかし探偵自身の体も謎の衝撃によって動きを止められ、世界の全貌が次第に明らかになっていく。本作は、ある少年が繰り広げる空想の世界と、それが閉じられるまでの過程を描く。
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一
ボーン! 音だ! ピストルの音だ! ……と、そんなように思われた。
で探偵が走って来た。
町は相当賑かであった。
電車が五ツ通っていた。家根は黒く車体は緑で、そうして柱はピンク色であった。車輪が黄金色で車道は青い。だが何うしたというのだろう。客が一人も乗っていないではないか。自動車が九ツ流れていた。その中の一つは貨物自動車で、黄色い荷物をのっけている。
往来の左側にビルディングがあるがあまりに色の強い化粧煉瓦で、胴体のあたりを飾っているので、どっちかというとあくど過ぎた。
そのうしろにもビルディングがある。これは木製で茶色である。
そのうしろの遥かなたに、匂うような薄緑の大ビルディングが、町を圧して聳えていたが、その高さは五層楼で、窓が無数に眼を開けていた。だがそれにしてもその窓々が、薄紅く見えるのはなぜだろう? 時計台が頂きにある。カーン、カーンと二ツ打った。今は午後の二時と見える。
その大ビルディングの少し手前に、事務所めいた家が立っていた。家根がセピア色に見えるのは、銅でも張ってあるのだろうか? いやいや断じてそんなことはない。そんな高尚な建物ではない。ペンキ塗のがさつな建物なのである。
その事務所めいた建物のうしろ――大ビルディングの前の方に、ゴチャゴチャと沢山の小家があった。いずれも安っぽい洋風の家で、町の美観を傷つけていた。
ところで往来の右側と来ては、全く形容のしようもないほど、小さい、貧弱な、和洋折衷の――色ばっかりが、けばけばしく、造作からいえばやにっこい、数え切れないほどの住宅が――調子のこわれた音楽のように、文字通り目茶苦茶に櫛比していたが、それは全く見る人の心を、都会嫌忌にまで導くに足りた。不快な存在といわなければならない。自然そういう家々の中に、もぐり込んで住んでいる人間をも、軽蔑しなければならないだろう。
そういう町を遮断するように、運河めいた堀川が横たわっていた。苫をかむった四個の舟、煙を吐いている一個の川蒸汽、浮かんでいるものといえばそれだけであった。
石造の橋がかかっていた。