第二の接吻
本文約120,800字 ・ 読了時間 約242分
あらすじ(AIが作成しました)
京都大学を卒業し川辺家に寄寓する村川は、秀才で美男として知られる。ある日曜の午後、家の子供たちに誘われ、広大な邸宅でかくれんぼに参加する。屋敷内で偶然、小間使が一枝の手によると思われるラブレターを見つけた長女の京子は、その相手が村川であると倭文子に語る。その後、箱根のホテルで眠り続ける村川と、亡くなった倭文子の姿を前にした京子は、自身の過去の行いを悔やみながら彼を献身的に看護する。
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かくれんぼ
一
コツコツとかすかなノック。
「お入り!」というと、美智子の眉の長いかわいい顔がのぞき込む。
「村川さん、かくれんぼしない?」
「かくれんぼですか、また!」
村川は、少したじたじとなる。この川辺家へ来てから、幾度かくれんぼに引き出されたかわからない。
「いいわよね。しましょうよ、ね。村川さん!」
六歳にして、すでに女らしい媚態を持つ、おませなモダンガールの美智子である。
「ね、お姉さまも、倭文子さんもお入りになるのよ。いらっしゃいよ。」
といって、村川はこのかわいい強制を、断らねばならぬほど用のある身体でもない。まして、今日は日曜の午後である。
村川は、この四月に京都大学の法科を出て上京して以来、下宿を見つけるまでのしばらくをこの川辺家に寄寓しているのだが、彼は、この家の主人から、ずっと前から世話になっている。高等学校時代からの学資も、この家の主人の尽力で、実業家の今井当之助から出してもらった。彼が卒業すると、すぐ今井商事会社に勤めることになったのも、一つはその恩義に報いるためである。
彼は、秀才で美男であった。しかも、近代的な美男であった。二三年振りに、彼に会ったこの家の長女の京子が、
「村川さんは、ラモン・ナヴァロに似ていやしない?」
と、いとこの倭文子にささやいたほどである。
「ええ似ているわ。でもナヴァロよりは顔が短いわ。」
「そうかしら。でも、眼付なんか、そっくりだわ。」
そういって、映画好きの二人が話し合った。だが、村川はこの色男役のスターよりも、もっと背が高く堂々としていた。だが、肉感的な頬、愛嬌のある眼付、物おじしたような温厚な風貌は共通していた。
村川は、美智子に促されて、かくれんぼに参加するために階下に降りた。階下の座敷には京子や倭文子が彼を待ち受けていた、京子に気に入りの小間使の一枝もいた。
京子は、今年二十一になっていた。背のスラリとした、美しい女である。輝かしいほどの美貌であるが、ただ額が少し広すぎるのと、鼻があまりに端麗なので、人に高圧的な印象を与えた。
「まあ! 村川さん、とうとうひっぱり出されたのねぇ。」