「古代感愛集」読後
本文約1,700字 ・ 読了時間 約4分
あらすじ(AIが作成しました)
「古代感愛集」に収められた詩篇の神さびた感覚や重量感、詩句の充実に触れ、本書を唯一の宗教的な詩集として論じる。古代日本の美を捉えた詩句や、民俗学的な精神を内包する長編詩の偉大さを称賛する。著者は本作に触れることで、現在の不安な心情を叱咤される思いを抱き、人間性や国民性を深く示唆する文学の創造に向けて、古くからの言い伝えや伝説を現代に蘇らせる手法を模索する意義を綴る。
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お寒くなりました しかしそれ以上に寒ざむしい世の中の變り果てた有樣のやうでございますね ときどき東京に行つて歸つてきた友人などに東京の話を聞くたびに、先生などいかがお暮らしかと、心の痛いやうな思ひをいたします さういふ折など、いつぞや頂戴いたした御手づつの「古代感愛集」を披いては、さういふ一切を超えられた、先生の搖ぎもなさらぬやうなお姿を偲んでは、何かと心を擾しがちな自分の氣おくれを叱つて居ります
かういふ現在において、「古代感愛集」はますます私には何よりも得難い書物となりました
近在の村に住んでときをり私を訪ねてくるフランス文學をやつてゐる友人にこの書物を見せましたら、ことにその長篇の詩に感動いたし、「ポオル・クロオデルの Ode のもつてゐるやうな、何んといふか……『偉大さ』といつたやうなものがありますね」と言つて居りました
クロオデルの Ode のもつ、あの汲めども汲めども盡きずに滾々と涌きあがつてくるやうな詩句の豐かさは、無限なるもの――「神」のうちにその源泉があるからでありませうが、それと等しいことが「古代感愛集」の諸篇のもつ神さびた感じ、その詩句の重量感、ことに長篇の詩のあふれるばかりに充實した感じなどに對しても言へるやうに思へます
さうしてさういふさまざまな感じが相俟つつて、私には、この書物が私たちの持ち得た唯一の宗教的な詩集として貴重なものに思へさへいたします(「古代感愛集」の宗教的な感じの源泉を深く究めることは私たちに課せられた大きな問題のひとつとなることでせう 少くとも私はこれから自分のすべき研究の一つの方向をそのはうへ向けて行く決心でゐます)