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TORENDIA

灯火節

本文約1,800字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

二月二日の燈火節や蝋燭の風習を手がかりに、聖女ブリジツトの伝説と起源を綴る。キリスト教的な家庭の守護神としての側面や、それ以前の古い民族信仰における火と詩の女神ブリードとしての姿を考察し、アイルランドの海岸や孤島に春の到来を告げる存在として語られる聖女の伝承を紹介する。春の訪れとともに現れるたんぽぽや仔羊、海鳥といった兆しを通じて、人々に慈しまれる「二月の美しい女」の神話的な情景を描く。

片山廣子

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🎧 灯火節 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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先日読んだ話のなかに燈火節といふ字が出てゐた、二月の何日であつたか日が分らないまま読んでゐたのを、今日辞書で探してみると、燈火節二月二日、旧教にては、この日に蝋燭行列をなし、一年中に用ひる蝋燭を祓ひ清むる風習あるを以てこの名あり、とあつた。先日読んでゐたのは聖女ブリジツトの物語で、彼女は二月に生れた人で、古いゲエルの習慣では、聖ブリジツトの日に春が来ると言つて、ちやうどこの燈火節の日に春を迎へる祝ひをしたものらしいが、特に蝋燭だけではなくブリジツトはすべての火を守る守護神でもある。「ゲエルのマリヤなるブリジツト」といふグレゴリイ夫人の伝説のはじめに「ブリジツトは春の初めの日の日の出る時に生れた。母はコンノートの奴稗であつた。天の使が彼女に洗礼をさづけてブリジツトと名づけた、火箭といふ名である。」またフィオナ・マクラオドの「浜辺の聖女ブリジツト」といふ文では「二月の美しい女」「温い火の聖女ブリード」「浜辺の聖女ブリード」と三つの名を挙げてゐる。

二月の美しい女ブリードは、キリストの養ひの母ブリジツトや、家庭をまもる聖女ブリジツトといふやうなキリスト教のにほひを持つ一人の女性とは違つて、それよりずつと古い時代の、ゲエルかそれよりも以前の民族に信仰されてゐた火と詩の女神ブリードの姿も一しよにされてゐるだらうと言つてゐる。ドルイドの司祭は彼女を片手には黄いろい小さな火焔を持ち、片手には火の赤い花をもつ「朝のむすめ」として礼拝してゐた。その火がなければ、人間の子たちも洞穴に住む野のけものたちと同じやうなものであつたのだらう。今も春が来るたびに「二月の美しい女」は思ひ出される。人の心に、昔の古い偉大な姿は消えても、をさなごキリストを一夜自分の胸に抱いて子守歌をうたつた養ひの母ブリジツトとして、人間の家庭の揺籠を夜も昼も守る女神として、また九十日の冬眠から天地自然が目をさまして春が生れる歓びとともに、二月の初めに生れた彼女を愛するのであらう。

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