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TORENDIA

書かでもの記

本文約20,200字 ・ 読了時間 約41分

あらすじ(AIが作成しました)

著者自身の文壇デビューから、『地獄の花』が金港堂より出版されるまでの経緯や、当時の出版界の状況を綴る。美育社における『饒舌』の発行や、大学館の『活文壇』の苦闘を振り返りつつ、森鴎外との出会いや三宅青軒の人物評など、文筆家として歩んだ初期の回想と、師との別れを収録する。

永井荷風

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一

身をせめて深く懺悔するといふにもあらず、唯臆面もなく身の耻とすべきことどもみだりに書きしるして、或時は閲歴を語ると号し、或時は思出をつづるなんぞと称へて文を売り酒沽ふ道に馴れしより、われ既にわが身の上の事としいへば、古き日記のきれはしと共に、尺八吹きける十六、七のむかしより、近くは三味線けいこに築地へ通ひしことまでも、何のかのと歯の浮くやうな小理窟つけて物になしたるほどなれば、今となりてはほとほと書くべきことも尽き果てたり。然るをなほも古き机の抽斗の底、雨漏る押入の片隅に、もしや歓場二十年の夢の跡、あちらこちらと遊び歩きし茶屋小屋の勘定書、さてはいづれお目もじの上とかく売女が無心の手紙もあらばと、反古さへ見れば鵜の目鷹の目。かくては紙屑拾もおそれをなすべし。

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