本文へ移動
TORENDIA

牛女

本文約4,900字 ・ 読了時間 約10分

あらすじ(AIが作成しました)

おしで心優しい大女の母親は、幼い一人息子を深く慈しみながら懸命に働く。彼女は病に倒れ、死後も子の行く末を見守ることを案じながら世を去る。その後、雪の日に山に姿を現して子を見守り続けた母親の霊魂は、子が故郷を離れると町で姿を見せ、再び子がりんご園を営むようになると、今度はこうもりに姿を変えて害虫を退治し、成功へと導く。親子の情愛と母親の変わらぬ慈しみの心を描く物語である。

小川未明

速度
🎧 牛女 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 6

ある村に、脊の高い、大きな女がありました。あまり大きいので、くびを垂れて歩きました。その女は、おしでありました。性質は、いたってやさしく、涙もろくて、よく、一人の子供をかわいがりました。

女は、いつも黒いような着物をきていました。ただ子供と二人ぎりでありました。まだ年のいかない子供の手を引いて、道を歩いているのを、村の人はよく見たのであります。そして、大女でやさしいところから、だれがいったものか「牛女」と名づけたのであります。

村の子供らは、この女が通ると、「牛女」が通ったといって、珍しいものでも見るように、みんなして、後ろについていって、いろいろのことをいいはやしましたけれど、女はおしで、耳が聞こえませんから、黙って、いつものように下を向いて、のそりのそりと歩いてゆくようすが、いかにもかわいそうであったのであります。

牛女は、自分の子供をかわいがることは、一通りでありませんでした。自分が不具者だということも、子供が、不具者の子だから、みんなにばかにされるのだろうということも、父親がないから、ほかにだれも子供を育ててくれるものがないということも、よく知っていました。

それですから、いっそう子供に対する不憫がましたとみえて、子供をかわいがったのであります。

子供は男の子で、母親を慕いました。そして、母親のゆくところへは、どこへでもついてゆきました。

牛女は、大女で、力も、またほかの人たちよりは、幾倍もありましたうえに、性質が、やさしくあったから、人々は、牛女に力仕事を頼みました。たきぎをしょったり、石を運んだり、また、荷物をかつがしたり、いろいろのことを頼みました。牛女は、よく働きました。そして、その金で二人は、その日、その日を暮らしていました。

こんなに大きくて、力の強い牛女も、病気になりました。どんなものでも、病気にかからないものはないでありましょう。しかも、牛女の病気は、なかなか重かったのであります。そして働くこともできなくなりました。

小川未明の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本