青い花の香り
本文約2,100字 ・ 読了時間 約5分
あらすじ(AIが作成しました)
十歳になるのぶ子は、幼いころ自分を可愛がってくれた遠方の国に嫁いだ姉の記憶を、不確かさと悲しみの中で抱えていた。ある秋の日、その姉から南アメリカの草花の種が届く。のぶ子と母は期待を込めて種を植え、春を待った。やがて芽が出て、真紅の花と青い花が咲き始める。のぶ子は青い花の香りをかいだ瞬間、遠い記憶の中にあった姉の面影を鮮明に思い出し、懐かしい再会のような喜びと驚きを感じて母のもとへ駆け寄る。
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のぶ子という、かわいらしい少女がありました。
「のぶ子や、おまえが、五つ六つのころ、かわいがってくださった、お姉さんの顔を忘れてしまったの?」と、お母さまがいわれると、のぶ子は、なんとなく悲しくなりました。
月日は、ちょうど、うす青い水の音なく流れるように、去るものです。のぶ子は、十歳になりました。そして、頭を傾けて、過ぎ去った、そのころのことを思い出そうとしましたが、うす青い霧の中に、世界が包まれているようで、そんなような姉さんがあったような、また、なかったような、不確かさで、なんとなく、悲しみが、胸の中にこみあげてくるのでした。
「そのお姉さんは、いまどうしていなさるの?」と、のぶ子は、お母さまに問いました。
「遠方へ、お嫁にいってしまわれたのよ。」と、お母さまも、その娘さんのことを思い出されたように、目を細くしていわれました。
「遠方へってどこなのですか。」と、のぶ子は黒い、大きな目をみはって、お母さまにききました。
「幾日も、幾日も、船に乗ってゆかなければならない外国なんだよ。」
こう、お母さまがいわれたときに、のぶ子は思わず、目を上げて、空の、かなたを見るようにいたしました。
「ほんとうに、いま、そのお姉さんがおいでたなら、どんなにわたしはしあわせであろう。」と、のぶ子は、はかない空想にふけったのであります。しかし、その願いもかまわないばかりか、せめて、そのお姉さんの顔を一目でもいいから見たいものだと思いました。
「お母さま、そのお姉さんは、どんなお方でしたの?」と、のぶ子は、どうかして、そのかわいがってくださったお姉さんを、できるだけよく知ろうとして、ききました。
お母さまは、また目を細くして、過ぎ去った日を思い出すようにして、
「それは、美しい娘さんだったよ。みんな通りすがる人が、振り向いていったもんです。」と、いわれました。
「どうか、そのお姉さんの写真でも見たいものです。」と、のぶ子は、ほんとうにそう思いました。