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TORENDIA

黒い塔

本文約3,800字 ・ 読了時間 約8分

あらすじ(AIが作成しました)

ある小さな国の女皇は、病で容姿が衰えた姉姫を疎み、美しい妹姫を次期後継者に指名する。居場所を失った姉は、街を見下ろす古い塔に登り、孤独な日々を送る。ある日、沖から押し寄せた巨大な津波が街を飲み込む。塔の頂に取り残された姉は、突如現れた不思議な赤い船に乗る見知らぬ人物によって救い出され、彼らとともに地平線のかなたへと去っていく。残された街は海に沈み、その後、塔も水中に姿を消す。

小川未明

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🎧 黒い塔 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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一

昔のことでありました。ある小さな国の女皇に二人のお子さまがありました。姉も妹もともに美しいうえに、りこうでありました。女皇は、もう年をとっていられましたから、お位を姉のほうのお子さまに譲ろうと思っていられました。

そのうち、姉のほうが、目をわずらわれて、すがめになられました。いままで、花のように美しかった顔が急に醜くなってしまいました。すると、女皇は、いままでのように、姉のほうはかわいがられずに、妹のほうをかわいがられるようになりました。

姉は、それをたいへん悲しみました。なにも自分の知ったとがではない。病気でこんなに醜くなったものを、なんでお母さまはきらわれるのだろうかとなげきました。

しかし、妹の情けは、前とすこしも変わりません。姉さんをうやまい、なつかしみました。しかるに、不幸の姉は、ある日こと、また、高い階段から落ちて、産まれもつかぬちんばになってしまった。

すがめでさえ醜いといってきらわれた、母の女皇は、そのうえちんばになっていっそう醜くなった姉のほうを、ますますうとんぜられたのであります。そればかりでなく、妹までが、姉をきらうようになったのであります。

これと反対に、妹の姫はますます美しくなりました。花よりも、星よりも、この世界に見られる、いかなる美しいものよりも、もっと美しく見られたのであります。貴い宝玉も、その美しさにくらべることができなかったのであります。

女皇の心は、いつしか、王位を妹に譲ろうときめていました。けれども、この街の民はどう思うかと気づかわれました。あたりまえならば姉が王位をつぐのが順序でありますから、街の人民は、なんといって、反対すまいものでもなかったのであります。

そこで、女皇は、街の人々にこれを聞くことにいたしました。すると、街の人々は、

「それは、われわれどもが王さまをいただくなら、美しい妹姫のような女皇が望ましいものでございます。醜いお方は、なんとなく気持ちが悪うございますから、どうか妹の姫をいただきたいものでございます。」と、訴えました。

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