一
昔のことでありました。ある小さな国の女皇に二人のお子さまがありました。姉も妹もともに美しいうえに、りこうでありました。女皇は、もう年をとっていられましたから、お位を姉のほうのお子さまに譲ろうと思っていられました。
そのうち、姉のほうが、目をわずらわれて、すがめになられました。いままで、花のように美しかった顔が急に醜くなってしまいました。すると、女皇は、いままでのように、姉のほうはかわいがられずに、妹のほうをかわいがられるようになりました。
姉は、それをたいへん悲しみました。なにも自分の知ったとがではない。病気でこんなに醜くなったものを、なんでお母さまはきらわれるのだろうかとなげきました。
しかし、妹の情けは、前とすこしも変わりません。姉さんをうやまい、なつかしみました。しかるに、不幸の姉は、ある日こと、また、高い階段から落ちて、産まれもつかぬちんばになってしまった。
すがめでさえ醜いといってきらわれた、母の女皇は、そのうえちんばになっていっそう醜くなった姉のほうを、ますますうとんぜられたのであります。そればかりでなく、妹までが、姉をきらうようになったのであります。
これと反対に、妹の姫はますます美しくなりました。花よりも、星よりも、この世界に見られる、いかなる美しいものよりも、もっと美しく見られたのであります。貴い宝玉も、その美しさにくらべることができなかったのであります。
女皇の心は、いつしか、王位を妹に譲ろうときめていました。けれども、この街の民はどう思うかと気づかわれました。あたりまえならば姉が王位をつぐのが順序でありますから、街の人民は、なんといって、反対すまいものでもなかったのであります。
そこで、女皇は、街の人々にこれを聞くことにいたしました。すると、街の人々は、
「それは、われわれどもが王さまをいただくなら、美しい妹姫のような女皇が望ましいものでございます。醜いお方は、なんとなく気持ちが悪うございますから、どうか妹の姫をいただきたいものでございます。」と、訴えました。