時計のない村
本文約3,700字 ・ 読了時間 約8分
あらすじ(AIが作成しました)
時計のない平和な田舎の村で、二人の金持ちが町から持ち帰った時計が原因となり、村の人々は二つの派閥に分かれて時間や約束をめぐる争いを繰り返すようになる。やがて二つの時計が相次いで故障したことで、村の人々は時計に依存する生活の不確かさに気づく。人々は太陽の動きで時刻を測るかつての暮らしへと立ち返り、再び平和な村の調和を取り戻していく様子を描く物語である。
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町から遠く離れた田舎のことであります。その村には、あまり富んだものがありませんでした。村じゅうで、時計が、たった二つぎりしかなかったのです。
長い間、この村の人々は、時計がなくてすんできました。太陽の上りぐあいを見て、およその時刻をはかりました。けれど、この文明の世の中に、時計を用いなくては話にならぬというので、村の中での金持ちの一人が、町に出たときに、その町の時計屋から、一つの時計を求めたのであります。
その金持ちは、いま、自分はたくさんの金を払って、時計を求めることを心の中で誇りとしました。今日から、村のものたちは、万事の集まりや、約束の時間を、この時計によってしなければならぬと思ったからであります。
「この時計は、狂うようなことはないだろうな。」と、金持ちは、時計屋の番頭にたずねました。
「けっして、狂うようなことはありません。そんなお品ではございません。」と、番頭は答えました。
「それなら、安心だが。」と、金持ちは、ほほえみました。
「この店の時間は、まちがいがないだろうな。」と、金持ちは、またききました。
「けっして、まちがってはいません。標準時に合わせてございます。」と、番頭は答えました。
「それなら、安心だ。」と、金持ちは思ったのであります。
金持ちは、買った時計を大事にして、自分の村へ持って帰りました。
これまで、時計というものを見なれなかった村の人々は、毎日のように、その金持ちの家へ押しかけてきました。そして、独りでに動く針を見て、不思議に思いました。また、金持ちから時間の見方を教わって、彼らは、圃にいっても、山にいっても、寄ると時計の話をしたのであります。
この村に、もう一人金持ちがありました。その男は、村のものが、一方の金持ちの家にばかり出入りするのをねたましく思いました。時計があるばかりに、みんなが、その家へゆくのがしゃくにさわったのであります。
「どれ、俺も、ひとつ時計を買ってこよう。そうすれば、きっと俺のところへもみんながやってくるにちがいない。」と、その男は思ったのです。