TRENDIA CLASSIC

赤い手袋

小川未明

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政雄は、姉さんからこさえてもらいました、赤い毛糸の手袋を、学校から帰りに、どこでか落としてしまったのです。

その日は、寒い日で、雪が積もっていました。そして、終日、空は曇って日の光すらささない日でありましたが、みんなは元気で、学校から帰りに、雪投げをしたり、また、あるものは相撲などを取ったりしたので、政雄も、いっしょに雪を投げて遊びました。そのとき、手袋をとって、外套の隠しの中に入れたような気がしましたが、きっとよく入れきらなかったので、途中で落としてしまったものとみえます。

政雄は、家に帰ってから、はじめてそのことに気づきました。いよいよなくしてしまいますと、なつかしい赤い手袋が目についてなりませんでした。それも、そのはずであって、毎日学校の往来に、手にはめてきたばかりでなく、町へ買い物にやらされたときも、この赤い手袋をはめてゆき、お湯にいったときも、この赤い手袋をはめてゆき、また、夜、かるたを取りに近所へ呼ばれていったときも、この赤い手袋をはめていったからであります。

それほど、自分に親しいものでありましたから、政雄は、惜しくてなりません。それよりも、もっと、こんなに寒いのに、雪の上に落ちていることが、手袋にとってかわいそうでなりませんでした。

「どんなにか手袋は、家に帰りたいと思っているだろう。」と考えると、政雄は、どうかして探してきてやりたい気持ちがしたのであります。

けれど、そのとき、やさしい姉さまは、政雄をなぐさめて、

「わたしが、またいい代わりをこしらえてあげるから、この風の寒いのに、わざわざ探しにいかなくてもいいことよ。」とおっしゃったので、ついに政雄は、その赤い手袋のことをあきらめてしまいました。

ちょうど、その日の暮れ方でありました。空は曇って、寒い風が吹いていました。あまり人通りもない、雪道の上に、二つの赤い手袋がいっしょに落ちていました。

いままで、暖かい外套のポケットに入っていた手袋は、冷たい雪の上にさらされてびっくりしていたのです。

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