さびしい野原の中に一本の木立がありました。見渡すかぎり、あたりは、まだ一面に真っ白に雪が積もっていました。そして、寒い風が、葉の落ちつくしてしまった枝を吹くのよりほかに、聞こえるものもなかったのです。
木は、こうして毎日、長い寒い冬の間、さびしいのを我慢していました。それにつけても、過ぎ去った春、夏、秋の間のいろいろ楽しかったこと、おもしろかったことを思い出していたのであります。
その中でも、くびのまわりの赤い鳥が、枝に巣を造って、三羽の雛をかえして、三羽の雛が仲よく枝から枝へ飛びうつっていましたのを、木は忘れることができませんでした。
「いまごろは、あの親子の鳥はどこへいったろう。さだめし暖かな土地へいって、ああして、楽しくさえずったり、飛びまわったりしているであろう。そして、また、こちらが春になって暖かになったら、忘れずにやってくるかもしれない。そのときは、もう三羽とも雛鳥は、大きくなっていることだろう。」と、木は思いました。
こうして、木立は、毎日、風の音を聞いて、白い雲を見つめるよりほかになかったので、さびしく、退屈でなりませんでした。
「ああ、早く春がきてくれればいい。」と、独りで野原の中で脊伸びをして、あくびをしましても、だれもそばで聞いているものもなかったのです。
しかるに、ある日のこと、一羽の小さなうぐいすがどこからか飛んできて、この木のこずえに止まりました。
木は、さっそく、このうぐいすに話しかけたのであります。
「うぐいすさん、見れば、まだおまえさんはお若いが、この寒いのにどこへおゆきなさるのですか。そして、どこからおいでなさいました。」と、木立は、うぐいすに問うたのであります。
すると、年こそ幼いが、りこうそうなうぐいすは、木のいうことを頭を傾けて聞いていましたが、
「私は、あちらのふもとのやぶの中からやってきました。私は、お母さんといっしょに、そのやぶの中で暮らしました。いい香いのする花が咲いていました。また赤い実がなっていました。それは、いいところでした。私は、お母さんといっしょなら、けっしてよそへはゆきたいなどと思うことはありません。