小さな赤い花
本文約2,300字 ・ 読了時間 約5分
あらすじ(AIが作成しました)
おそろしいがけの中ほどの岩かげに生まれた小さな赤いとこなつの花は、周囲に仲間もなく寂しい日を送る自身の運命を嘆く。ある日、路を迷ったこちょうが訪れ、野原で咲き誇る仲間たちの様子を語る。その後、寒さが厳しくなり、暴風に遭って傷ついたこちょうが再び花のもとへ避難してくる。厳しい自然の中で孤独に咲く花が、外の世界を知り、自身の生と運命に向き合う様子を描く。
💰 この本を応援する(投げ銭)
おそろしいがけの中ほどの岩かげに、とこなつの花がぱっちりと、かわいらしい瞳のように咲きはじめました。
花は、はじめてあたりを見て驚いたのであります。なぜなら、目の前には、大海原が開けていて、すぐはるか下には、波が、打ち寄せて、白く砕けていたからであります。
「なんというおそろしいところだ。どうしてこんなところに生まれてきたろう。」と、小さな赤い花は、自分の運命をのろいました。それはちょうど、寒い雪の降る国に生まれたものが、暖かな、いつも春のような気候の国に生まれなかったことを悔い、貧乏な家に生まれたものが、金持ちの家に生まれて出なかったことをのろうようなものであります。
けれど、それはしかたがないことでありました。とこなつの花は、そこに生い立たなければならぬのでした。花は、ものこそたがいにいい交わしはしなかったが、自分の周囲にも、ほかの高い木や、低い木や、またいろいろな草が、やはり自分たちの運命に甘んじて黙っているのを見ますと、いつしか、自分もあきらめなければならぬことを知ったのであります。
天気のいい日には、海の上が鏡のように光りました。そして、そこは、がけの南に面していまして、日がよく当たりましたから、花は物憂いのどかな日を送ることができましたが、なにしろ、がけの中ほどで、ことにほかには美しい花も咲いていませんでしたから、みつばちもやってこず、ちょうもたずねてきてくれませんので、寂しくてならなかったのであります。
花は、海の方から吹いてくる風に、そのうすい花弁を震わせながら、自分の身の不幸を悲しんでいました。
ある日のことであります。一ぴきの羽の美しいこちょうが、ひらひらと、どうしたことかその辺へ飛んできました。そして、そこに、赤いとこなつの花の咲いているのを見つけると、さっそく、花の上に飛んできました。
「まあ、珍しく、かわいらしい花が、こんなところに咲いていること。」と、ちょうはいいました。
これを聞きつけた、とこなつの花は、ちょうを見上げて、