TRENDIA CLASSIC

空色の着物をきた子供

小川未明

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夏の昼過ぎでありました。三郎は友だちといっしょに往来の上で遊んでいました。するとそこへ、どこからやってきたものか、一人のじいさんのあめ売りが、天秤棒の両端に二つの箱を下げてチャルメラを吹いて通りかかりました。いままで遊びに気をとられていた子供らは、目を丸くしてそのじいさんの周囲に集まって、片方の箱の上に立てたいろいろの小旗や、不思議な人形などに見入ったのです。

なぜなら、それらは不思議な人形であって、いままでみなみなが見たことがないものばかりでした。人形は新しいものとは思われないほどに古びていましたけれど、額ぎわを斬られて血の流れたのや、また青い顔をして、口から赤い炎を吐いている女や、また、顔が六つもあるような人間の気味悪いものの外に、鳥やさるや、ねこなどの顔を造ったものが幾つもならんでいたからです。片方の中には、あめが入っていると思われました。みんなは、これまで村へたびたびやってきたあめ売りのじいさんを知っています。しかし、そのじいさんはどうしたか、このごろこなくなりました。そのじいさんの顔はよく覚えています。けれど、だれも今日この村にやってきたこのじいさんを知っているものはなかったのです。

じいさんはチャルメラを鳴らしながら、ずんずんと往来をあちらに歩いてゆきました。やがて村を出尽くすと野原になって、つぎの村へゆく道がついていました。

「なんだろうね、あの人形は? 口から血が出ていたよ。僕はあんなすごい人形を見たことがないよ。」と、三郎がいいました。

「僕だって見たことがないよ。あのあめ売りのじいさんは、はじめて見たのだよ。」と、友の一人がいいました。

「もっとそばへいってよく見ようか?」と、またほかの一人が、こわいもの見たさにいったのであります。

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