TRENDIA CLASSIC

灰色の姉と桃色の妹

小川未明

1 / 5

あるところに、性質の異った姉妹がありました。同じ母の腹から産まれたとは、どうしても考えることができなかったほどであります。

妹は、つねに桃色の着物をきていました。きわめて快活な性質でありますが、姉は灰色の着物をきて、きわめて沈んだ、口数の少ない性質でありました。

二人は、ともに家を出ますけれど、すぐ門前から右と左に分かれてしまいます。そして、いつもいっしょにいることはありませんでした。妹は、広々とした、日のよく当たる野原にいきました。そこには、みつばちや、ちょうや、小鳥などが、彼女のくるのを待っているように、楽しく花の上を舞ったり、空を駆けていい声でないていました。

いろいろな色に咲く花までが、彼女の姿を見ると、いっそう鮮やかに輝いて見えるのでありました。

妹は、柔らかな草の上に腰を下ろしました。そして、しばらくうっとりとして、身の周囲に咲いている花や、ちょうにじっと見入っていましたが、しまいには、自分もなにかの唄を口ずさむのでありました。その唄はなんのうたであるか知らなかったけれど、きいていると楽しくうきたつうちにも、どこか悲しいところがこもっていました。

妹は、唄にもあきてくると、懐から、紅い糸巻きを出して、その糸を解いて、銀の棒で編みはじめていました。銀の棒は日の光にきらきらとひらめきました。紅い糸は、解けては、緑の草の上にかかっていました。

姉は、妹に別れて、独り北の方へ歩いていきました。そこは、一段低くがけとなっています。がけの下にはさびしい空き地があって、そこには、二、三本の憂鬱な常磐木が空にそびえていました。そして、その黒ずんだ木立の間に混じって、なんの木か知らないけれど、真っ白な花が咲いていました。

その白い花の色は、ほかの色とちがって、冷たく、雪のように見えたのであります。姉は、がけを降りていきました。危うげな路が、がけにはついていたのであります。

小川未明の他の作品