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TORENDIA

自分で困った百姓

本文約1,500字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

ある田舎で助け合って暮らす二人の百姓がいた。ある年、一人の芋が不作となる一方で、もう一人の畑は豊作に恵まれる。豊作の百姓は相手に分け与えることを惜しみ、不作だと偽って収穫を隠し通す。分け前を持ってきた相手の誠実さに気まずさを感じた彼は、隠した芋を腐らせてしまい、最終的にすべて処分することとなる。互いの信頼と欲求の間で揺れ動く人間の心理と、その顛末を描く物語。

小川未明

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🎧 自分で困った百姓 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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一

ある田舎に、二人の百姓が住んでおりました。平常はまことに仲よく暮らしていました。二人とも勉強家で、よく働いていましたから、毎年穀物はたくさんに穫れて、二人とも困るようなことはありませんでした。

あるとき、甲は乙に向かっていいました。

「おたがいに達者で、働くことはできるし、それに毎年気候のぐあいもよくて、圃のものもたくさん穫れて、こんな幸福なことはない。いつまでも仲よく暮らして、おたがいに助け合わなければならん。」と、たばこに火をつけて、それを吸いながらいいました。

「ほんとうでございます。ほかに頼みになる人もおたがいにないのだから、助け合わなければなりません。」と、乙は答えました。

太陽は、晴れやかに話をしている二人を照らしていました。二人は、のんきに、いつまでも仲よく話をしていました。そして、二人は別れて、おたがいに自分たちの圃にいって働きはじめました。

二人の圃は、だいぶ離れていました。けれど毎年穀物は、ほとんど同じようによくできたのであります。

二人は、圃に成長する穀物を見て、それをなによりの楽しみにいたしました。甲は乙の圃へゆき、乙はときどき甲の圃へきて、たがいに野菜や穀類の伸びたのをながめあって、ほめあったのであります。

二

けれど、こうした野菜や、穀物というものは、かならずしも勤勉や土地にばかりよるものでありません。

ある年、どうしたことか、乙の百姓のまいた芋のできが、たいそう悪うございました。乙は甲のところへやってきて、

「どういうものか、私のところの芋は、たいへんに不できだが、おまえさんのところの芋はどんなですかい。」といいました。

甲は、この四、五日、ほかのほうに忙しくて、芋畑へいってみませんでした。

「さあ、どうなったか、明日いってこよう。」と答えたのであります。

その明くる日、甲は自分の畑へいって芋のできを見ました。すると、いかにも元気よく生き生きとして、葉の色は黒光りを放っていました。

「乙のところの芋は、今年はすっかりだめだっていうが、俺のところの芋は、こんなによくできた。きっと乙の奴がうらやましがって、わけてくれろというだろう。」と、甲は独り言をもらしました。

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