風の出そうな空模様の日でありました。一ぴきのせみが、小さなこちょうに出あいました。
「なんだか怖ろしいような空模様ですね。今夜はあれるかもしれません。早く家へ帰りましょう。」と、せみはいいました。
正直なこちょうは、空を見上げて、
「ほんとうに暗くなりました。あんなに雲ゆきが早うございます。早く家へ帰りましょう。」と答えました。
そこで、ふたりは、風に吹かれながら空を飛んできましたが、小さなこちょうは、おくれがちなので、せみはもどかしく思いました。
「こちょうさん、あなたのお家はどこですか。」とききました。
「私の家は、あちらの花圃です。あすこには姉も妹もきて待っています。」と答えました。
「あんな頼りのない花圃なんですか、今夜の大風をどうして、あんなところで防ぐことができますか。」と、せみはあきれたような顔つきをしていいました。
こちょうは、また空を見上げました。ますますものすごく空の景色はなっていくばかりです。
「あなたのお家は、どこですか。」と、こちょうはせみにたずねました。
「私の家ですか。それは大きな木です。もうすこしいくと、その木が見えるはずです。こんもりとしげっていて、風や雨が、めったにさらすものではありません。どんな大風が吹いても、それは安全なものです。私たちには、とてもあなたのようなおぼつかない生活はできないのです。」と、せみは得意になって答えました。
あちらには、黒いこんもりとした大きな木が見え、こちらには、きれいな花のたくさん咲いている花圃が見えました。二人は、別れなければなりませんでした。
「そんならこちょうさん、今夜をお気をつけなさいまし。また、ふたりが無事でしたら、お目にかかりましょう。」と、せみはいいました。
「あなたも、どうぞご機嫌よう。私は、あなたの幸福を神さまに祈っています。」と、こちょうはいいました。そして、右と左に分かれていきました。
「ほんとうに、あの哀れなこちょうに、ふたたびあわれるだろうか。」と、せみは途すがら考えました。