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TORENDIA

百姓の夢

本文約7,200字 ・ 読了時間 約15分

あらすじ(AIが作成しました)

年老いた牛を酷使し、若い牛と換えようとする百姓は、雪の降る夜に道に迷い、牛の力で命拾いをする。しかし恩を忘れ、再び牛を売ろうと画策する中で不思議な夢を見る。笛や太鼓を鳴らす子供たちを乗せた牛が池へ入っていく光景に焦り、目を覚ますと、道なき場所で寒さに震え果てた己の姿があった。強欲のために大切な存在を追い求めた果ての無常な現実に直面する男の葛藤と夢幻の体験を描く。

小川未明

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🎧 百姓の夢 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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あるところに、牛を持っている百姓がありました。その牛は、もう年をとっていました。長い年の間、その百姓のために重い荷をつけて働いたのであります。そして、いまでも、なお働いていたのであったけれど、なんにしても、年をとってしまっては、ちょうど人間と同じように、若い時分ほど働くことはできなかったのです。

この無理もないことを、百姓はあわれとは思いませんでした。そして、いままで自分たちのために働いてくれた牛を、大事にしてやろうとは思わなかったのであります。

「こんな役にたたないやつは、早く、どこかへやってしまって、若いじょうぶな牛と換えよう。」と思いました。

秋の収穫もすんでしまうと、来年の春まで、地面は、雪や、霜のために堅く凍ってしまいますので、牛を小舎の中に入れておいて、休ましてやらなければなりません。この百姓は、せめて牛をそうして、春まで休ませてやろうともせずに、

「冬の間こんな役にたたないやつを、食べさしておくのはむだな話だ。」といって、たとえ、ものこそいわないけれど、なんでもよく人間の感情はわかるものを、このおとなしい牛をひどいめにあわせたのであります。

ある、うす寒い日のこと、百姓は、話に、馬の市が四里ばかり離れた、小さな町で開かれたということを聞いたので、喜んで、小舎の中から、年とった牛を引き出して、若い牛と交換してくるために町へと出かけたのでした。

百姓は、自分たちといっしょに苦労をした、この年をとった牛に分かれるのを、格別悲しいとも感じなかったのであるが、牛は、さもこの家から離れてゆくのが悲しそうに見えて、なんとなく、歩く足つきも鈍かったのでありました。

昼過ぎごろ、百姓はその町に着きました。そして、すぐにその市の立っているところへ、牛を引いていきました。すると、そこには、自分の欲しいと思う若い馬や、強そうな牛が幾種類となくたくさんにつながれていました。方々から百姓たちが、ここへ押し寄せてきていました。中には、脊の高いりっぱな馬を買って、喜んで引いてゆく男もありました。彼は、うらやましそうに、その男の後ろ姿を見送ったのです。

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