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TORENDIA

新しい町

本文約3,200字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

戦後の新しい町で、露店を営む少年・勇吉は、戦争で亡くなった父の帰りを待ち続け、戦地で心に傷を負った人々の姿を目の当たりにする。隣に店を出す親しい老人に見守られながら、日常の風景に潜む戦争の爪痕と向き合う勇吉の心情を描く。厳しい現実の中、復員兵の痛ましい様子や失われた友人を想い、少年が将来への自覚を芽生えさせるまでの日々を綴る物語。

小川未明

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🎧 新しい町 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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もくら、もくらと、白い雲が、大空に頭をならべる季節となりました。遠くつづく道も、りょうがわの町も、まぶしい日の光をあびています。戦争のためやけたあとにも、新しいバラックができ、いつしか昔のようなにぎやかさをとりかえし、この先発展をにおわせて、なんとなく、わかわかしい希望を感ずるのでありました。

道ばたの露店は、たいてい戦災者か、復員した人たちの、生活をいとなむのでありました。勇吉は、おかあさんと、毎日ここへでて、ろうそくや、マッチや、うちわなどをならべて、あきなっていました。

その前を通る人の中には、よごれた服をきて、まきぎゃはんをはき、おもそうなリュックをしょい、いま戦地から、もどったばかりというふうな人もありました。そうかと思うと、はでな着物をきて、美しい日がさをさす女の人もありました。

きょうは、勇吉ひとりで、露店へでていました。そして、おとうさんがまだ生きていてひょっこりかえってくるのではないかと、空想にふけりながら、あてもなく町の右や左をながめていました。

かれのとなりには、おじいさんが、げたの店をひろげていました。そのおじいさんは、なにかとせわをしてくれたり、うちとけて話をしてくれる、したしみぶかい人でした。だまっているときは、よくおじいさんは、いねむりをしていました。しかし、ねむりきっているのではないから、なんでも、よくわかっているようです。

「おじいさん、そこへへび屋ができましたね。」と、勇吉は話しかけると、

「もと、あちらの角にあったのが、やけたので、こっちへ、移ってきたのだろう。」と、おじいさんは、目をとじたままで、こたえました。

「前には、いろんな生きたへびが、びんの中に、入っていましたね。こんどは、生きたのがいませんよ。」

「そうかい、いなくなったか。」と、おじいさんはいって、だまってしまいました。それは、ねむってしまったのでなく、考えごとにふけったからでした。

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