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TORENDIA

生きぬく力

本文約5,300字 ・ 読了時間 約11分

あらすじ(AIが作成しました)

中学生の孝二は、貧しい家庭環境にありながら健気に働く級友・小泉の正直な姿に敬意を抱いていた。同窓会で孝二は、優秀な成績を収めながら若くして逝った級友らに対し、苦しい生活の中でも真面目に働き続ける小泉の生き方に「生きぬく力」の尊さを見出し、参加した面々に語りかける。健康で正直に働くことこそが人としての誇りであると説き、困難な時代を生き抜く精神のあり方を描く物語である。

小川未明

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🎧 生きぬく力 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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「孝二、おまえでないか。」

「僕、そんなところへさわりませんよ。」

玉石の頭から、すべり落ちた青竹を、口をゆがめながらもとへ直して、おじいさんは、四つ目垣の前に立っていました。いたずら子がきて、抜こうとするのだと思ったのです。竹馬にするには、ちょうど手ごろの竹だからでした。しかし、この辺の子供には、そんな悪い子がないと考えると、植木屋の締め方が足りなかったのかと、しゅろなわの結び目をしらべてみたが、そうでもなさそうでした。

平常から、若いものが戦争にいって死ぬのに、自分は、長く生きすぎたと思っているおじいさんは、

「これで、七、八年は持ちましょう。」と、植木屋が造りながらいったのを聞いたとき、そのころには、孝二は、中学を卒業するであろうし、自分は、生きているかどうか、わからないと思ったのでした。

「孝二、見つけたら、しかってくれ。」

おじいさんは、垣根のきわに植わっている、まだつぼみの堅いじんちょうげの葉についたどろを洗ってやりました。若いうちは、なんでもぞんざいに取り扱ったのが、年をとると、どれにも自分と同じような生命があるように思えて、いたわる心が生ずるのでした。

黒いマントを頭からかぶって、がたがたの自転車に乗った少年が走ってきました。折れたハンドルを、針金やひもで結び合わせて、巧みにあやつりながら、足には破れたくつをはいていました。息をきらしながら犬がついてきます。門のところで、自転車を降りると、前側の板べいへ寄せかけて、ポケットから、焼き芋を出して、自分は食わずに、それを犬にやりました。犬は、一口に食べると、少年の顔を見上げて尾を振っていました。少年は、マントの下に肩からかけた、新聞の束から、一枚引き抜くと、門を開けて入り口へまわらずに、竹の垣根の方へ近づきました。

ちょうど、空をこうしの内からながめていた孝二は、いつも新聞をここへ入れていくのは、この子が配達するのかと思って見ていました。しかし、子供の手は、垣根の外から伸ばしても窓の内へはとどかなかったのです。少年は、窓の際に、自分ぐらいの子供の立っているのに気づきました。

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