写生に出かけた少年
本文約1,600字 ・ 読了時間 約4分
あらすじ(AIが作成しました)
野原で風景を写生していた西田と南は、手にした銅貨を眺めて笑いながら歩く一人の男に出会う。男は道を通りかかった馬と衝突し、大切にしていた銅貨を落としてしまう。オートバイの音に驚いて逃げ出した男が落とし物を拾いきれずに去ったあと、二人は残された銅貨を拾われないように見守る。やがて探しに戻ってきた男がそれを見つけ、喜ぶ姿を見た少年たちは、男への憐れみを感じながらその場を去る。
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野原の中に、大きなかしの木がありました。その下で、二人の少年は、あたりの風景を写生していました。
あちらには町があって、屋根が強い日の光にかがやいています。こちらには、青々とした田圃があって、野菜の花が、白に黄色に、咲いているのが見られました。
「僕は、あの並木を描こう。」と、西田が、いいました。
だまって、南は、じっとひとところを見つめては、チョークをうごかしていました。
「君は、なにを写生しているの?」
西田は、友だちのスケッチ帳をのぞくと、煙突から、煙が上がっている、町の遠景を描いていました。
「いいね、あの風に光っている木立も、雲も……」と、顔を上げた南が、答えました。
このとき、前方から、一人の男が、なにかぴかぴかするものを、手のひらにのせて、それを見ながら、やってきました。
「光るな、なんだろうか。」と、南がいいました。
「あの男は、ばかなんだよ。」と、西田がいいました。
「ええ、ばか?」
「ああ、あの男は、ばかなんだよ。けれど、おとなしい、なんにもわるいことをしないのだ。活動のエキストラになんか出て、喜んでいるという話だよ。」と、西田は、人から聞いたことを話しました。
「どうして、ばかになったのだろうね。」
南は目をみはりながら、あちらからくる男を見ていました。帽子もかぶらずに、手のひらを熱心に見つめています。
「あれは、金貨みたいだね。」
「は、は、は、金貨なもんか。きっと、新しい一銭銅貨なんだよ。光るから喜んで見ているのだろう。」
「たくさん持っているね。」
「ほんとうに、光るのばかりためたんだろう。」
ふつうならば、高等小学か、中学一年へでも入っている年ごろでした。どうしてばかになったんだろうと思うと、南は、なんだかいじらしい気がして、笑われなくなりました。
男は、こちらに自分を見ているものがいるとも知らず、また、夏の景色がどんなに美しかろうと目を向けず、ただ、手のひらの銅貨に気をとられて、ひとり、にやにや、たのしそうに笑いながら、わきみもせずに、道を歩いていました。
すると、こっちから、馬子が、手綱をとり、馬に空車を引かせてやってきました。