TRENDIA CLASSIC

すずめ

小川未明

1 / 5

冬の日は、昼過ぎになると、急に光がうすくなるのでした。枯れ残ったすすきの葉が黄色くなって、こんもりと田の中に一所茂っていました。そこは低地で、野菜を作ることができないので、そうなっているのかもしれません。往来からだいぶ離れていましたが、道の方が高いので、よくそのあたりの景色は見下ろされるのでした。晩方になると、すずめたちは、群れをなして、森の中の巣へ帰っていくのでしょう。チュン、チュン、鳴き交わしながら、空を飛んでいきました。彼らが、ちょうど、そのすすきのやぶの上へさしかかろうとすると、ぱっとして、驚いたように、急に群れが乱れたのです。なぜなら、下のすすきの中で、声をかぎりに自分たちを呼ぶ友の声をきいたからでした。

「どうしよう、だれか呼んでいるじゃないか。」と、先頭に立って、飛んでいた一羽が、仲間を見まわしていいました。

「いいえ、いってしまおう。」といったものもあります。

「きっと、餌があるから、降りろというのだ。」というものもありました。

すると、中には、

「いや、そうじゃない。どうかしたんだ、助けてくれといっているのだ。」と、いったものもあります。

こうして意見がまちまちであったので、彼らは、そのまま先へ飛んでいくこともできずに、すすきの生えている上の空を、二、三べんもぐるぐるまわって、話し合っていましたが、こんなことに、かかりあっていてはろくなことがないと考える連中は、

「じゃ、僕たちは、先へいくから。」といって、その群れは二つに別れてしまいました。

「まあ、ああいって呼んでいるのだ、いってみよう。」と、残った群れは、それから注意深く下のようすを探りながら、ぐるぐると空をまわってだんだん下へ降りてきました。そのうちに勇敢な一羽は、勢いよく、つういと、その声のする方へ走っていきました。つづいて、二羽、三羽と、後についてやぶの中へ降りたのです。

このとき、どこからか、さっと雲のような灰色の影が、眼前をさえぎったかと思うと、たちまち網が頭からかかってしまいました。

小川未明の他の作品