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TORENDIA

太陽と星の下

本文約5,400字 ・ 読了時間 約11分

あらすじ(AIが作成しました)

S少年は、時計屋の空想や町での発見を通じて、戦後の社会情勢や不平等について思索を深める。ある日、興味を引かれた骨董店が突然葬儀屋に変わっていたことに戸惑い、兄から戦後の混乱と世相を聞かされる。狭い国土で困窮する人々の現状や、人間の強欲さがもたらす戦争、動物たちへの残忍な行為に対し、疑問を抱くようになる。少年たちは自由な空に平和への憧れを募らせ、国際親善の作文を通して、誰もが幸福に暮らせる世界の実現を願い始める。

小川未明

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🎧 太陽と星の下 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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S少年は、町へ出ると、時計屋の前に立つのが好きでした。そして、キチキチと、小さな針が、正しく休みなく、時をきざんでいるのを見て、――この時計は、どこの工場で、どんな人たちの手で造られたのだろう――と、空想するのでした。

すると、明るい、清潔な、設備のよくいきとどいた、近代ふうの工場が、目の前に浮かび上がります。彼は、いつか自分も、こんな工場へ通って働き、熟練工になるかもしれないと、思ったりするのでした。こうして、町は、少年にいろいろな、たのしい夢を与えてくれました。

ある日、四つつじの角のところへ、新しく美術店ができました。しかし、そこには、新しいものより、古いもののほうが多かったから、むしろ、こっとう店というのかもしれません。

入り口のガラス窓の内には、まるいつぼがおいてありました。

少年は、その深みのある、青い海をのぞくような色に、ひきつけられたのです。

「いい色だな。」と、そのやわらかな感じは、なんとなく気持ちをやわらげました。まだ、なにかあるかと、あたりを見まわすと、おくの方の台に、赤いさらがかざってありました。

これは、夏の晩方、海面へ、たれさがる雲のように、みずみずとして、美しかったので、こんどは、目がその方へ奪われてしまいました。なんでも、その図は、中国人らしい、一人の女が、赤いたもとをひるがえして、おどっているのでした。

少年は、近くそばへ寄って見たかったのだけれど、買えるような身でないから、さすがにその勇気がなく、こころ残りを感じながら、店さきをはなれたのです。

すこしくると、魚屋がありました。店さきの台の上に、大きな切り身がおいてありました。その肉の色は、おどろくばかり毒々しく、赤黒くて、かつて、魚では、こんなのを見たことがありません。

「これは、鯨の肉だな。そうだ、南極からきた冷凍肉だ。人間とおなじく、赤ちゃんをかわいがる哺乳動物の肉なんだ。」

こう思った瞬間、いままでの頭の中のなごやかなまぼろしは消えてしまって、そこには、残忍な、血なまぐさい光景が、ありありと浮かびました。

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