TRENDIA CLASSIC

高い木とからす

小川未明

1 / 3

林の中に、一本、とりわけ高いすぎの木がありました。秋が近づくと、いろいろの渡り鳥が飛んできて、その木のいただきへとまりました。群れをなしてくるものもあれば、なかには、つれもなく、一羽だけのものもありました。

村の子供たちは、そのさえずる声を聞いて、自由に、大空を飛んでいける鳥の身の上をうらやんだのであります。

「あの木に、もちぼうをつけておけば、鳥がとれるね。」

「とっても、飼い方を知らなければ、しかたがないじゃないか。」

友だちが、こんな話をしていると、重ちゃんが、そばから、

「どんな鳥も、すり餌をやれば、いつくんだよ。」といいました。

しかし、その木のいただきまで上れるものは、重ちゃんくらいのもので、ほかの子には、目がまわるほど、あまりに高かったのです。

ある日、新しいしらせがはいって、子供たちの間で、話に花がさきました。それというのは、からすが、あの高いすぎの木に巣をつくったというのでした。

「それは、ほんとうかい。どうして、こんな人のたくさんなところへ巣をつくったろうね。」

そういった子供は、からすは、毎朝早く、まだ暗いうちから、山を出て、遠い里へいき、また晩方になると、いく組も列をなして、頭の上を鳴きながら、山へ帰るのを見たからです。

「いつか、鳥屋のおじいさんが、からすの子供を上手に飼うとおもしろいといったよ。」と、一人がいいました。

「どうしてかい?」と、ほかの一人がたずねました。

「よくなれると、人のいうことをきくし、いろいろな口まねをするって。」

「そうかい。そんなら、僕、巣をとって、からすの子を飼おうかな。」といったのは、重ちゃんでした。

「重ちゃん、およしよ。からすは親孝行の鳥だと、うちのおばあさんがいったよ。子供の時分、やしなってもらったご恩を忘れないで、大きくなると、年とった親を食べさせてあげるって。」と、一人の子がいいました。

すると、別の子が、

「学校の先生は、からすは害鳥だ。まいた豆や麦をほじくりだして食べるから、畑へきたら、追っぱらえといったよ。」といいました。

重ちゃんは、どちらが正しいだろうかと、だまって、聞いていました。

小川未明の他の作品