だれにも話さなかったこと
本文約2,400字 ・ 読了時間 約5分
あらすじ(AIが作成しました)
内弁慶で弱虫な「僕」は、幼稚園へ通う際、いつも姉に付き添ってもらっていた。ある日、遊戯の時間に姉まで列に加わって歩く姿を見て、その恥ずかしさと申し訳なさから、僕は激しい葛藤を抱く。周囲には理解されぬまま、自尊心ゆえに強くなった僕は、翌日から一人で通園し始める。本書は、幼少期の記憶を通じて、姉への感謝と、誰にも伝えられなかった胸の奥の切ない思いを、懐かしさと共に綴る。
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あのときの、女の先生は、まだいらっしゃるだろうか。それにつけ、僕は、深く心にのこって、忘れられない当時の思い出があります。
しばらく、さくの外に立って、もう一度そのときのことを頭にえがき、自分の子供の時分をかえりみました。
どちらかといえば、僕は、内弁慶で、外では弱虫というのでしょう。幼稚園へも、なかなか一人ではいけなかったのでした。
「姉さん、ついていってよ、それでなけりゃ、いや。」と、いざ朝になって、いくときになると、いいはりました。
「じゃ、こんどだけ、いっしょにいってあげましょうね。」と、姉は、ついていってくれました。
家を出ると、さびしいけれど町になります。お菓子屋や、くだもの屋や、酒屋や、薬屋などがあって、角のところにある、ラジオ屋の前をまがると、細い道となります。
その道をいくと、じき、幼稚園のところへ出るのでした。
門の前までくると、立ちどまって、
「さあ、お入りなさい。姉ちゃんは、もう帰っていいでしょう。」と、姉は、いいました。
もう、校舎の入り口には、きのう、いっしょに遊んだ、子供たちが二、三人もかたまって、僕のほうを見て、なにか話しあって、笑っています。きっと、弱虫とでもいっていたのでしょう。そう知りつつも、僕は勇気を出して、一人で入ることができなかった。それどころか、ますます、悲しくなって、姉の手をひき、
「お姉ちゃんも、いっしょでなければいや。」と、泣かんばかりに、いいました。
姉は、なんと思ったか、いやなようすもみせず、笑いながら、
「しかたがないのね、じゃ、いっしょに入りますよ。」と、いって、門を入りました。
僕のたのみなら、なんでもよくきいてくれる、やさしい姉は、教室の中へも、いっしょに入って、先生のお話を聞いていました。
僕たちは、教場の中で、教わるよりも、外へ出て、広場で遊んだり、うたったりするときのほうが多かった。しかし、僕には、内にいるほうが好ましく、外へ出て、みんなといっしょに手をつなぎ合って、遊戯をしたり、うたったりするのが、なんとなく、はずかしい気がして、好かなかったのです。