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TORENDIA

野菊の花

本文約3,400字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

原っぱに捨てられた子犬を見つけた正二と清吉らは、衰弱するその子犬を救おうと力を合わせる。牛乳を探して町を奔走する子供たちの純粋な姿を、かつて宿無し犬を冷酷に扱われた苦い記憶を持つ牛乳配達の青年が見守る。本作は、無力な生き物に対する少年たちの慈愛に満ちた行動と、それを見つめる青年の心情を対比させながら、野菊が咲く風景の中で育まれる命の交流を描く物語である。

小川未明

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🎧 野菊の花 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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一

正二くんの打ちふる細い竹の棒は、青い初秋の空の下で、しなしなと光って見えました。

「正ちゃん、とんぼが捕れたかい。」

まだ、草のいきいきとして、生えている土の上を飛んで、清吉は、こちらへかけてきました。

「清ちゃん、僕いまきたばかりなのさ。あの桜の木の下に、犬が捨ててあるよ。」と、正二はこのとき、鳥の飛んでいく方を指しながら、いいました。

「ほんとう、どんな犬の子?」

「白と黒のぶちで、耳が垂れていて、かわいいよ。」

「それで、どうしたの。」と、清吉は、ききました。

「みんな、見てるよ。」

「困るね。僕たちの遊ぶ原っぱへ捨てるなんて、だれだろうなあ。」

清吉の心は、もうそのほうへ奪われてしまいました。

棒を持った正二も、清吉についてきました。

二人は、並んで歩きながら、話をしました。

「このあいだ、どこかの若いおばさんが、ねこの子をこの原っぱへ捨てにきたとき、正ちゃんはおらなかったかな。」

「ああ、おったとも。僕たち、ボールを投げていたじゃないか。まだ三十ぐらいのやさしそうなおばさんだったろう。」

「なにがやさしいものか。だれか見ていないかと、くるくるあたりを見まわしてから、ふいに、ぽいとねこの子を草の中へ投げたんだよ。ねこはニャア、ニャアと泣いている。あまりかわいそうだから、僕、おばさんを追いかけたのだ。なんでねこの子をこんなところへ捨てるんですか、かわいそうじゃありませんかといったのさ。」

「そうだったね。」

「そうすると、おばさんは、怖い目をして僕の方を振り返ったんだよ。うちのねこじゃありませんよ、お勝手へ入ってきてうるさいから、ここへ持ってきて置いていくのですと。」

清吉は、そのときのことを思い出すと、いまでも小さな胸が、熱くなるのを覚えました。

「しかし、よかったね。洋服屋のおじさんがちょうど通りかかって、ねずみが出て困っているのだからといって、つれていってくれたので。」と、正二は、いいました。

「あのねこ、どうしたろうね。」

「いるよ。僕このあいだ前を通ったら、ガラス戸の中で、表の方を向いて、顔を洗っているのが見えた。」

「手をなめて、顔を洗っていたの、かわいいなあ。」

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