ひすいの玉
本文約3,300字 ・ 読了時間 約7分
あらすじ(AIが作成しました)
横町の古物店に通う少年竹夫は、店主の温かい人柄に親しみを抱いていた。ある日、骨董屋への悪評を聞き苦悩するが、店に持ち込まれた母の形見のひすいを前に、店主が自らの利益を顧みず客の利益を優先する誠実な姿を目の当たりにする。真の人間としての尊さを知った竹夫が、偏見を乗り越え、店主の真実の生き方に触れていく様を描く。
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町というものは、ふしぎなものです。大通りから、すこしよこへはいると、おどろくほど、しずかでした。子どもたちは、そこで、ボールを投げたり、なわとびをしたりして、遊びました。
横町の片がわに、一軒の古物店がありました。竹夫は、いつからともなく、ここのおじさんと、なかよしになりました。おじさんは、いつも、店にすわって、新聞か雑誌を読んでいました。まだ、そう年よりとは思われぬのに、頭がはげていました。
竹夫は、そのそばへ腰かけて、なにか、おもしろいものがありはしないかと、店の中を見まわしました。ほんとうに、いろいろのものが、ならべてありました。しかし、たいてい名を知らぬものばかりです。それに、むかしのものが多く、いまはつかっていない品なので、どうして、これがいいのか、ただ見るだけでは、美しいというよりか、むしろきたならしい感じがしたのでした。
「おじさん、あれは、女の顔なの。それとも、男の顔なの。」と、竹夫が、柱にかかっている、面をさして聞きました。どちらにも見えるからでした。
「あの、お能の面か。女の顔さ。あれは、なかなかよくできているのだよ。」
こう、おじさんに聞くと、なるほど、どことなくけだかさがあり、それでいて、いまにもにっこりわらいそうです。
「やさしくて、いいお顔だね。」
「わかるかな。は、は、は。」と、おじさんは、きげんがいいのでした。
竹夫は、このぱっとしない、ねむるような店の中に、さがしだされるのを待っている、美しいものがあるのを、感じました。
「あの、りゅうがかいてある香炉の頭は、ししの首なんだね。」と、台にのっている、そめつけの香炉を、竹夫はさしました。
おじさんは、にこにこして、新聞を下におき、めがねごしに、竹夫を見つめながら、
「きみは、なかなかいいものに目がつく。感心だ。いまから、研究心をもって、古い美術に趣味をもてば、いまに目があかるくなる。まことにいいことだ。これは、中華民国の二千年ばかりも前のものだよ。」と、おじさんは、手をのばして、わざわざ香炉をとりあげ、竹夫にわたしました。