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TORENDIA

昼のお月さま

本文約1,400字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

秋晴れの日、太郎と良二の兄弟は出征兵士を見送るため停車場へ急ぐ。到着時にはすでに兵士は去っていたが、二人は貨物列車に載せられた馬や兵士の姿を目撃する。戦争へ赴いている父親を思いやる二人は、帰路で荷車に苦戦する老人を助け、青空に浮かぶ昼の月を見上げて父も同じ月を眺めているのではないかと想像し合いながら森へと歩を進める。幼い兄弟の日常風景を通して、戦時下にある人々の心情や思いやりを描く。

小川未明

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🎧 昼のお月さま / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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「万歳!」と、いう声が、どこか遠くの方から、きこえてきました。

「兄ちゃん、停車場だね、また、兵隊さんが出征するんだよ。」と、良二が、いいました。

「いってみようか、良ちゃん。」

兄の太郎は目をかがやかして、青々とした、秋の空を見やりました。

「ばんざい、ばんざあい。」と、いう声が、また、きこえました。

「兄ちゃん、いこう。」

二人は、往来を駅の方に向かって、駈け出したのです。電線の上に、白い月が、ぽかりと浮かんでいました。これを見つけた、良二が、

「なあんだ、いま時分、お月さまが出ているよ。」と、走りながら、笑いました。

「ああ、苦しい。良ちゃん、ちっと休もうよ。」と、太郎が、いいました。

「兄ちゃん、僕より、弱虫だなあ。」

「だって、僕、こんなげたをはいているんだもの。」

太郎は、げたで、良二は、運動ぐつをはいていました。やっと停車場へ着くと、もう出征の兵士は立ってしまった後とみえて、あたりは、しんとしていました。たすきをかけた、国防婦人の人たちの姿も見えませんでした。事変がはじまってから、毎日のように、この駅から出征兵士が立ったので、駅の入り口には、白い布へ、「祝壮途」と、大きな字で書いた額がかかっていました。

「良ちゃん、もう、立ってしまったんだね。」

「せっかくきたんだから、汽車を見ていこうよ。」

二人は、線路のそばのさくにもたれて、シグナルや、石炭の山や、トロッコのある、構内の景色をながめていました。

「天に代わりて不義を討つ、忠勇無双の我が兵は……。」と、日の丸の旗を持った、子供がうたっていました。きっと、さっき立った兵士を見送った子供たちでありましょう。

ボーウと、高く汽笛の音がしました。

「貨物だ。長い貨物だなあ。」

良二は、伸びあがって、ながめていました。いくつかの箱に、日の丸の旗が立っています。

「あっ、馬が出征するんだ。」

どの箱の中にも、馬が入って、兵隊さんがついていました。

「万歳!」と、良二が、叫びました。

汽車は、駅には停車せずに、そのまま過ぎてしまいました。

秋風が吹いています。かなたの森が、黄色くなってきました。白い雲が、空を飛んでゆきます。

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