風船虫
本文約2,000字 ・ 読了時間 約4分
あらすじ(AIが作成しました)
原っぱの水たまりで風船虫を見つけた年ちゃんと誠くんは、その虫を分け合い家に持ち帰る。年ちゃんは瓶に入れた虫が紙片を器用に上げ下げする様子を眺め、自然の不思議に心を動かす。翌日、木工職人のおじさんから町の商店でも風船虫が灯火に集まってくることを聞き、年ちゃんは小さな虫の自由な営みに思いを馳せながら、どこまでも高く広がる空を見上げる。本作は、少年が自然の神秘に触れ、豊かな感性を育む姿を描く物語である。
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原っぱは、烈しい暑さでしたけれど、昼過ぎになると風が出て、草の葉はきらきらと光っていました。昨日は、たくさん雨が降ったので、まだくぼんだところへ、水がたまっています。もうすこしばかり前でありました。
「きょうは、きっとよく釣れるよ。」といいながら、徳ちゃんは、釣りざおとバケツを持って先に立ち、後から、正ちゃんが、すくい網をかついでここを通ったのです。
年ちゃんは、毎日のように川へいくと、おばあさんにしかられるので、今日は、いっしょにいくのをやめたのでした。二人が、もう川へ着いた時分、年ちゃんは、原っぱへきて、お友だちをさがしていました。
「やあ、きれいだな。」と、年ちゃんは、水たまりのところに立ち止まって、大空の白い雲が下の水の面に映っているのをのぞいていました。
ちょうど、同じ時刻に、あちらには、誠くんが、さびしそうに独りで遊んでいて、年ちゃんを見つけると、
「年ちゃんおいでよ。おもしろいものがあるから。」といいました。
「なあに。」と、年ちゃんは、もはや雲のことなど忘れてしまって、その方へ駆けていきました。
「風船虫が、いるよ。」と、誠くんは、穴の中を指しました。
その穴は、このあいだ、みんながボールをして遊んでいると、ペスがきて、しきりに前足で掘っていたところでした。
年ちゃんが、水の中を見ると、黒い虫が、五、六ぴきも底の方を往ったり、きたりしていました。
「これが、風船虫なの?」
「ああ、風船虫だよ。」
「君は、釣りにいかなかったのかい。」と、年ちゃんが、誠くんに聞きました。
「きょうは、早くお湯に入って、お母さんとお使いにいくのだから。」と、誠くんは、いかない理由を、語りました。
「僕、風船虫をお家へ持っていこうかな。」
「ああ、二人で分けようよ。」と、誠くんがいいました。
そこで、年ちゃんと、誠くんは、紙片の中へ虫を半分ずつ分けて、二人は、めいめいお家へ持って帰ったのであります。