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TORENDIA

僕はこれからだ

本文約8,500字 ・ 読了時間 約17分

あらすじ(AIが作成しました)

達吉は父を戦地で亡くし、母も病で失う。その後、都会の伯父に引き取られ少年工として暮らす。ある日、教会の屋根でカラスに襲われる子鳩を救おうと危険な壁を攀じり、転落の危機に瀕する。死の直前で大木の枝に飛び移り九死に一生を得た達吉は、その瞬間に自らの意志で強く生き抜くことを決意し、飛行兵を志して未来を見据える。

小川未明

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村からすこし離れた、山のふもとに達吉の家はありました。彼は学校の帰りに、さびしい路をひとりで、ひらひら飛ぶ白いこちょうを追いかけたり、また、田のあぜで鳴くかえるに小石を投げつけたりして、道草をとっていたこともあります。そして、裏の松林にせみの鳴いている、我が家が近づくと急になつかしくなって、駈け出したものでした。

父親というのは、体つきのがっちりした、無口の働き者でした。今日じゅうに、これだけ耕してしまおうと心で決めると、たとえ日が暮れかかっても、休まずに仕事に精を入れるという性質でしたから、村の人たちからも信用されていました。ところが事変の波は、こうした静かな田舎へも押し寄せてきました。彼には召集令が下ったのであります。カーキ色の服に戦闘帽を被って、赤いたすきをかけた父親は肩幅の広い姿勢を毅然として、日の丸の旗を持ったみんなから送られて、平常は、あまり人の通らないさびしい路を、町の方へといったのでありました。それは、ついこのあいだのことと思ったのが、はや二年ばかりになりました。そして、その父親が、中支の戦線で、激戦の際、戦死を遂げたという知らせがとどいたので、さすがに、家のものはじめ、村の人々は、まったく夢のような気がしたのであります。あの健康な、意志の強い男が、もうけっして、もどることがないと思ったからでした。

達吉の母親は、やせ形な、女らしい、優しい性質の人でした。父親が、いなくなってから、達吉は学校が退けて、途中から友だちと別れて一人ぼっちで帰ると、こんど父親に代わって母親が、手ぬぐいを被ってうつむきながら、たんぼで野菜の中に埋もれてせっせと働いているのを見ました。

しかるに、この母親とも別れた。達吉は、いつになっても、その日のことを考えるとたまらなくなるのでした。それは、父親の戦死を聞いたときよりも、もっと悲しさが深く胸に迫ってくるのでした。

母親は、まくらもとへ達吉を呼びました。

「もし、私が病気で死んだら、おまえは、東京の伯父さんのところへいくのだよ。伯父さんも、いい人だから、よくいうことをきくのだよ。」

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