夕雲
本文約2,100字 ・ 読了時間 約5分
あらすじ(AIが作成しました)
コスモスが咲く秋の日に、母と娘のもも子は日曜日を過ごす。母の肩こりを案じ、外遊びから戻ったもも子は、偶然見かけた按摩のおばあさんを自宅へ招き入れる。按摩は、かつて自身が目が見えなくなった時の出来事を語り始める。子供時代、美しい夕焼け雲を見た後に訪れた湯屋で手ぬぐいから異変が生じ、視力を失った過去と、今も目に焼き付いているその情景を綴る。この話を耳にしたもも子は、秋のうらさびしい心持ちと共に、按摩の経験を深く胸に刻む。
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お庭の垣根のところには、コスモスの花が、白、うす紅色と、いろいろに美しく咲いていました。赤とんぼが、止まったり、飛びたったりしています。お母さんは、たんすのひきだしにしまってあった、浅黄木綿の大きなふろしきを出して、さおにかけ、秋の日に干していられました。ふろしきをひろげると、白く染めぬいた紋が見えました。
「お母さん、大きなふろしきですね。」と、もも子さんは、お縁側で見ていて、いいました。
「もう三十年も前になります。私がお嫁にきたときに、おふとんを包んできたのですよ。昔の木綿ですから、まじりがなくてじょうぶです。こんど、おまえがお嫁にいくときは、これにおふとんを包んであげますよ。」と、お母さんは、おっしゃいました。
もも子さんは、なんだかうれしいような、悲しいような気持ちがして、ぼんやりと日がほこほこと当たる、布をながめていました。
よし子さんや、かず子さんのお母さんは、まだお若くて、髪の色も黒くていらっしゃるのに、うちのお母さんは、どうして、もうこんなに白髪が多いのだろう。かず子さんのお母さんも、染めていらっしゃるときいたけれど。
「お母さん、髪をお染めにならないの。私、お母さんの若くおなりなさるの、うれしいんですもの。」
「ええ、染めたいと思いますが、いつもそんときには、お客さまがあって、汚い頭をしていて困りますから、もも子のお休みの日でもないと染められません。」と、お母さんは、いわれました。
もも子さんは、明日は日曜日だから、お母さんが髪をお染めになればいい、そして、ごいっしょに散歩につれていっていただこうと思いました。
「明日、私、どこへもいかずに、お家にいるわ。」
「じゃ、明日ばかりは、染めましょうね。」
日曜の日には、もも子さんが、きた人のお取り次ぎをしました。そして、午後のことであります。
「おかげで、さっぱりしました。もも子などは、これから大きくなって、世の中というものを知るのですけれど、お母さんのように年をとると、髪は白くなるし、肩は凝るし、目はかすんで、しかたがありません。きょうは、よく家にいてくれました。さあ外へいって遊んでいらっしゃい。」