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TORENDIA

夕焼けがうすれて

本文約3,300字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

戦時下の日本、父を亡くした少年工・達夫は、母を支えるべく健気に働いていた。ある晩、達夫は夜業で帰宅が大幅に遅れてしまう。息子の身を案じた母は、心配のあまり深夜の駅まで迎えに行く。ようやく現れた達夫の元気な姿を見て安堵しながらも、母は過酷な労働環境に息子を想い、暗闇の中で密かに涙を流す。本作は、戦時中の緊迫した日常と、互いを慈しむ母子の姿を描く物語である。

小川未明

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🎧 夕焼けがうすれて / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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汽笛が鳴って、工場の門をでるころには、日は西の山へ入るのでありました。ふと、達夫は歩きながら、

「僕のお父さんは、もう帰ってこないのだ。」と、頭にこんなことが思い浮かぶと、いつしかみんなからおくれて、自分は、ひとりぼんやりと、橋の上に立っていました。

もはや通る人もありません。水は海の方へ向かって流れています。広告燈の赤い光が、川水のおもてに映っていました。

「いつか、お父さんに海へつれていってもらった。帰りは、暗くなった。そして、電車の窓から、あの広告燈が見えたっけ、あのときは楽しかったなあ。」

学生服を着た少年の目から、熱い涙がながれました。つねに彼はほがらかだったのです。お父さんは、お国のために戦って、死んだのだ。そして英霊は永久に生きていて、自分たちを見守っていてくださるのだ。だからさびしくないと信じていたのでした。しかるに、どうしたのか、今日は、ばかにお父さんのことが思い出されてなつかしかったのです。

「もし、生きていらして、あの小山くんのお父さんみたいに、凱旋なさったらなあ。」と、考えると、思っただけで、飛びたつような気がしました。

ちょうど、このとき、灰色の影が、銃をかついで、あちらから橋を渡って、足音をたてずに、きかかりました。

「あっ、お父さんでないか。」

達夫は、目をみはりました。たとい、幽霊でも、お父さんだったら抱きつこうと待っていると、それは、釣りざおをかついで、どこかの人がつかれた足を引きずりながらくるのでした。

「駅へは、まだ遠うございますか。」と、その人が、たずねました。

「この町をまっすぐにいって、つき当たるとじきです。」と、達夫は、おしえました。

ぶどう色に空は暮れて、ボーウと、サイレンが鳴りひびきました。これから、工場では、夜業がはじまるのです。

「非常時のことで、仕事が忙しくなりました。体が強健で、希望の方は、奮って居残ってもらいたい。」と工場長のいった言葉が、達夫の耳に、はっきりとよみがえりました。

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