TRENDIA CLASSIC

雪消え近く

小川未明

1 / 2

早く雪が消えて、かわいた土の上で遊びたくなりました。雪の下にかくれている土の色がなつかしいのであります。吉郎は、自分の家の前だけでも早く雪をなくそうと思いました。それで朝から外に出て木鋤で、雪をわってはそれを力いっぱい遠く畠の方へとなげていました。

日がほかほかと当たってきました。しじゅうからが、林へ来て鳴いています。空は、うす青く晴れて、なんとなく気持ちの伸び伸びとするいいお天気でした。

「吉郎さん、雪をわっているの。」と、隣のとめ子さんが赤いえり巻きの中へ半分顔を埋ずめながら、そばへきていいました。

「はやく、雪がなくなるといいね。そうすれば、いろんなことをして遊べるだろう。」と、吉郎は、手を休めて、答えました。額ぎわには、働いたので、あせがにじんでいました。

「おまりをついたり、鬼ごっこをしたりして遊べるわね。」

「だから、早く、僕、雪を消そうと思っているのさ。」

「私も、おてつだいをしましょうか。」

「とめ子さんは、自分の家の前の雪を消せばいいだろう。」

「じゃ、そうするわ。」

とめ子さんは、お家へ帰っていきました。するとまもなく、とめ子さんは、兄の年雄さんと二人で、支度をしてきました。年雄さんは堅い雪をわるのに、鉄のシャベルを持ち、とめ子さんは、小さな木鋤を持っていました。

「やはり、吉郎さんのお家のほうからやっていきましょうよ。吉郎さんのお家のほうがすんだら、私の家のほうをして、飛んで遊べるようにしましょうよ。」と、とめ子さんが、いいました。

「吉郎くん、それがいいだろう。」と、年雄さんが、いいました。

「ああ、そうしよう。三人でやれば、今日じゅうに、ここだけはできるからね。」

三人は、雪をわって、それをなげるのに夢中でありました。はやく春がきて、土の上で遊べる楽しみを考えるからです。

昼過ぎになると、空がすこし曇りました。そして、風が寒くなって、さらさらと雪が落ちてきました。

「あっ、また降ってきたよ。」と、年雄が空を見上げました。

「せっかく、雪をなくしたのに、つまらないわ。」

「年ちゃん、じきに晴れるよ。あっちの方が明るいだろう。」

小川未明の他の作品