TRENDIA CLASSIC

雪の降った日

小川未明

1 / 6

雪が降りそうな寒い空合いでした。日も射さなければ、風も吹かずに、灰色の雲が、林の上にじっとしていました。葉のついていないけやきの細い枝が煙って見えるので、雲と木の区別がちょっとわからないのでありました。

「泣き出しそうな空ね。」と、かよ子ちゃんがいいました。

「ほんとうだわ。私、こんな日がきらいよ。」と、ふところ手をした竹子さんも、いいました。男の子たちとはなれて、二人は、並んで空をながめていました。

「もっとなにか持っておいでよ。火がなくなってしまうじゃないか。」

重ちゃんの兄さんが、棒の先で、たき火をつついていました。青い煙が自分の方へ流れるので、顔をしかめています。

年ちゃんは、走っていって、どこからか米俵の空いたのを下げてきました。原に捨ててあったとみえて、俵は霜でぬれていました。

「待った、待った。そんなのを入れると、すぐ火が消えてしまう。よくここで、乾かしてからでないとな。」と、ブリキ屋のおじいさんがいいました。おじいさんは、自分で木くずを拾ってきました。このあいだまで大工たちが、ここで他所へ建てる家の材木を切り込んでいたのでした。ここは、町裏の原っぱであります。

まだ、お正月なので、子供たちは、ここへきて、たこを上げたり、羽根をついたりして遊んでいました。

「ごらんよ、女があんなことをしている。乞食なんだね。」と、先に気のついた年ちゃんが、いったので、たき火にあたっているものが、みんなその方を向きました。一人の女が、長いはしのようなもので、ごみ捨て場をかき返して、落ちている菜っ葉や、新聞紙のようなものを地の上へひろげて、撰り分けていました。

「ああ、乞食だね。」と、義ちゃんが、いいました。

「いや、乞食じゃない。あちらに車が置いてある。」と、おじいさんが、いいました。なるほど、手車が置いてあって、その車の上にかごが乗っていました。

「なんなの、おじいさん。」

「そうだな。あれは、貧乏のくず屋さんだ。」

小川未明の他の作品