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TORENDIA

世の中のために

本文約4,200字 ・ 読了時間 約9分

あらすじ(AIが作成しました)

ある日、ふと忘れてしまった重大な真理を思い悩む「僕」は、友人との会話をきっかけに、自分が抱いた正義の苦悩を思い出す。それは、正しい者が迫害される運命への恐れであった。祖父との対話を経て、気難しい叔父を訪ねた僕は、正義を貫く勇気と一致協力の重要性を説かれる。運命をあきらめるのではなく、共同の努力と科学の力で社会を明るくしようと志す青年の成長と、世の中の在り方に対する深い洞察を描く作品。

小川未明

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🎧 世の中のために / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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毎日雨が降りつづくと、いつになったら、晴れるだろうと、もどかしく思うことがあります。そして、もうけっして、この雨はやまずに、いつまでもいつまでも降るにちがいないと、一人できめて、曇った空を見ながら、腹立たしく感じ、あの空へ向かって、大砲でも打ってみたらと空想することがあります。

「どうした天気だろうな。」と、人の顔を見さえすればうったえるのでした。

ところが、とつぜん、雲が切れて、青い空がのぞき、黄金色の矢のような、日の光がさすと、さっきまでのゆううつが、どこかあとかたもなく消えてしまって、心までが別人のごとく変わるのでした。

きれいにすみわたった空の下では、あの曇った日にいだいた、ゆううつな思いを、二度味わってみたいと思っても、どうなるものでもありません。しかし、こんなことは、どうだっていいのです。ところが、僕は、ふと空想に浮かんだ、ある重大な問題をどうかしたはずみに忘れてしまったのです。それは忘れたですまされない、自分の一生を左右するとまで考えたものだけに、どうしても、もう一度それを思い出さなくてはならなかったのでした。そして、思い出すまで、僕は、毎日ゆううつな日を送りました。

あるときは、机の前に立ったり、すわったりしました。家の内を歩いてみました。どうかして、それを思い出そうとこころみました。しかし、雲をつかむようで、考えたことが、なんであったか、まったく見当がつきません。だが、最初それを考えた糸口となったものが、あったにちがいない。それは、なんであったか、僕は昨日から、今日へかけて、散歩した場所を目に浮かべたり、読んだ書物について、吟味したりしたのでした。けれど、やっぱり雲をつかむようだったのです。

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