TRENDIA CLASSIC

世の中のために

小川未明

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毎日雨が降りつづくと、いつになったら、晴れるだろうと、もどかしく思うことがあります。そして、もうけっして、この雨はやまずに、いつまでもいつまでも降るにちがいないと、一人できめて、曇った空を見ながら、腹立たしく感じ、あの空へ向かって、大砲でも打ってみたらと空想することがあります。

「どうした天気だろうな。」と、人の顔を見さえすればうったえるのでした。

ところが、とつぜん、雲が切れて、青い空がのぞき、黄金色の矢のような、日の光がさすと、さっきまでのゆううつが、どこかあとかたもなく消えてしまって、心までが別人のごとく変わるのでした。

きれいにすみわたった空の下では、あの曇った日にいだいた、ゆううつな思いを、二度味わってみたいと思っても、どうなるものでもありません。しかし、こんなことは、どうだっていいのです。ところが、僕は、ふと空想に浮かんだ、ある重大な問題をどうかしたはずみに忘れてしまったのです。それは忘れたですまされない、自分の一生を左右するとまで考えたものだけに、どうしても、もう一度それを思い出さなくてはならなかったのでした。そして、思い出すまで、僕は、毎日ゆううつな日を送りました。

あるときは、机の前に立ったり、すわったりしました。家の内を歩いてみました。どうかして、それを思い出そうとこころみました。しかし、雲をつかむようで、考えたことが、なんであったか、まったく見当がつきません。だが、最初それを考えた糸口となったものが、あったにちがいない。それは、なんであったか、僕は昨日から、今日へかけて、散歩した場所を目に浮かべたり、読んだ書物について、吟味したりしたのでした。けれど、やっぱり雲をつかむようだったのです。

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