TRENDIA CLASSIC

民藝とは何か

柳宗悦

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第一篇 なぜ民藝に心を惹かれているか

一 民藝とはいかなる意味か

工藝の諸問題のうちで、過去に対しても将来に向っても、一番意味深い対象となるのは民藝の問題なのです。美の問題からしても経済の問題からしても、これ以上に根本的な工藝問題はないのです。何故なら工藝の鑑賞に浸る時、またはその真理を追求する時、誰もこの領域に帰って来るからです。「民藝品たること」と「工藝品たること」との間には、密接な関係が潜むからです。工藝が実用を生命とする限り、民藝をこそ工藝中の工藝と呼ばねばなりません。それ故何人もこの問題に触れることなくしては、工藝論を組み立てることができないのです。

しかるに今日までこの領域が真理問題として明確に取り扱われたことはないのです。もし正当にその意義が認識せられたら、工藝の歩むべき方向について、またそれを顧みるべき批判の原理について、一つの標的を捕え得るでしょう。だが多くの人々にとって、それは見慣れない世界であるに違いないのです。それ故私はできるだけ平易な言葉のうちに、順を追って目撃した真理を記してゆこうと思うのです。恐らく何事よりも字句の意味から筆を起すのが至当かと思われます。

民藝とは民衆が日々用いる工藝品との義です。それ故、実用的工藝品の中で、最も深く人間の生活に交る品物の領域です。俗語でかかるものを「下手」な品と呼ぶことがあります。ここに「下」とは「並」の意。「手」は「質」とか「類」とかの謂。それ故民藝とは民器であって、普通の品物、すなわち日常の生活と切り離せないものを指すのです。

それ故、不断使いにするもの、誰でも日々用いるもの、毎日の衣食住に直接必要な品々。そういうものを民藝品と呼ぶのです。したがって珍らしいものではなく、たくさん作られるもの、誰もの目に触れるもの、安く買えるもの、何処にでもあるもの、それが民藝品なのです。それ故恐らくこれに一番近い言葉は「雑器」という二字です。昔はこれ等のあるものを雑具とも呼びました。

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