TRENDIA CLASSIC

美の国と民藝

柳宗悦

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ちょうど科学者が少しでもこの世を真理に近づけたいと仕事に勤むように、私は生きている間に少しでもこの世を美しくしてゆきたいと念じている者です。宗教家の身になれば、どうかして神の国をこの世に具現したいと希うでしょう。同じように私は美の国をこの世に来したいばかりに、様々なことを考えまた行おうとしているのです。

それならどうしたら美によって義とせられる国が実現されるか。このことを用意するためには、どうしても二つのことが根本になると思われます。第一は何が正しい美なのかを明らかにしておかねばなりません。いわば美の標準を定めることです。これがなければ進むべき方向が分らなくなるでしょう。それも能う限り物に即してその標的を示すことが肝要に思われます。基準は具体的であることがさらに望ましいのです。抽象に止っては活きた力を齎らし難いからです。

第二にはどうしたらかかる正しい美しさでこの世を広く潤すことができるか。それを実現し得る道筋を見出さねばなりません。それには美が量に交る必要がありましょう。ですがたくさんできるものが果して美と結び合うかどうか。そのことがまず以て明らかにされねばなりません。もし不可能なら吾々の希望は果敢ない夢に過ぎなくなるでしょう。

私はこれ等の真理を明らかにするために、無数の品物を顧みました。そうしてそこから何が正しい美しさなのかを学ぼうとしました。かくして長い間の経験と反省とはついに一つの結論に私を導いたのです。それはこうでした。美のことについては今までは誰も美術にのみ注意を傾けましたが、美の密意を解くためには、工藝がいかに大切な鍵を与えるかを悟るに至ったのです。そうしてその工藝の中でも民藝が、すなわち民衆的工藝がいかに美の国を来すために、重要な役割を勤めるかを切実に感ずるに至ったのです。のみならず何の摂理か、美の健康さが最も豊にそこに見出されることを知ったのです。しばらくの間、私のこの信念について心を開いてよき聴手となって頂けたら幸いに思います。

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