田舎のお母さん
本文約2,200字 ・ 読了時間 約5分
あらすじ(AIが作成しました)
奉公に出ているおみつのもとに、田舎の母から手縫いの着物が届く。都での生活に馴染む中で、周囲から田舎風だと揶揄され着物を恥じることもあったが、デパートの物産展でお嬢さんがその着物の生地の価値を認め、故郷の技術の高さに気づく。本作は、疎ましく感じていた母の贈り物を再評価し、離れて暮らす家族への誇りと愛情を抱き直す少女の心の変化を描く。
💰 この本を応援する(投げ銭)
奉公をしているおみつのところへ、田舎の母親から小包がまいりました。あけてみると、着物がはいっていました。そして、母親からの手紙には、
「さぞ、おまえも大きくなったであろう。そのつもりでぬったが、からだによくあうかどうかわかりません。とどいたら、着てみてください。もしあわないようでしたら、夜分でもひまのときに、なおして着てください。」と、書いてありました。
おみつは自分のへやにはいって、お母さんからおくってきた着物をきてみました。田舎にいるときには、お正月になってもこんな着物をきたことがなかったと思いました。自分だけでなく、村でもこんな美しい着物をきる娘は、なかったのであります。
彼女は、しばらく自分のすがたに見とれていました。ちょうどそこへ、坊ちゃんが外からたこをとりにはいってきて、おみつのようすを見たので、
「みつ、それを着ると、なんだか田舎の子みたいになるよ。」といって、笑いました。
おみつも、田舎では美しいのであろうけれど、都ではみんながもっと美しい着物を着ているから、あるいはそう見えるかもしれないと思うと、急にはずかしくなって、
「なぜ、お母さんはもっとはでなのをおくってくだきらなかったのだろう? わざわざおくってくださらずとも、自分がすきなのをこちらでこしらえればよかったのに……。」と、心でいいながら、着物をぬいで、行李の中へしまってしまいました。
晩になって、おしごとがおわりました。彼女は自分のへやへはいってひとりになると、しみじみとして田舎のことが考えられました。行李から着物をとりだしました。村からあの峠をこして母親が町へ出て、機屋でこの反物を買い、家にかえってからせっせとぬって、おくってくださったのです。そう考えると、また、いくたびかこのぬいかけた着物を手にとりあげて、
「娘にあうかしら?」と、首をかしげて見入られたであろう母親のすがたさえ、目にうかんでくるのでした。
おみつは、お母さんの手紙を着物の上でひらいて、もういちどよみかえしているうちに、あついなみだが、おのずと目の中からわいてくるのをおぼえました。