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TORENDIA

海と少年

本文約1,800字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

海辺へやってきた清は、宿の人からかつて旅の途中で取り残され、海に消えた少年の伝説を聞かされる。月のいい晩には悲しげな笛の音が聞こえ、翌日は漁獲がないという不思議な話に、清は興味を惹かれる。翌日、水泳の先生からお化けを見せると言われ沖へ向かった清は、波間を自由に泳ぎながらハーモニカを吹く少年と出会う。先生は、それはお化けではなく、この浜で評判の水泳の天才少年だと教え、清に水泳のけいこを励ます。

小川未明

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🎧 海と少年 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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清さんとたけ子さんの二人は、お母さんにつれられて、海岸へまいりました。

「清さんは、男ですから、泳ぎを知らなくてはいけません。ここには、泳ぎの上手な先生がいらっしゃるから、よく習って、覚えなさいね。」と、お母さんは、おっしゃいました。

その晩、清さんは、お母さんや、妹のたけ子さんと、海の見えるお座敷で、メロンやお菓子を食べながら、宿の人から、いろいろのおもしろいお話をききました。中でも、いちばん心をひかれたのは、もう、七、八年も前になるが、五、六人連れの旅芸人が、ある日、急いでここの港から、船に乗って出立したときのことであります。乗り後れた一人の少年がありました。船は、少年を残して、そのままいってしまったのです。少年は、後を追うにも、はるばるとした海の上ですから、どうすることもできなく、独り岩の上に立って、悲しそうに、持っている笛を吹いていました。

少年は、いまにも怖ろしい土用波が、やってくるということを知らなかったのです。これから、どう歩いていったら、船で立った親方や、友だちに、しまいには追いつくことができるだろうかと考えていたのでしょう。そのとき、沖の方から怖ろしい山のような大波が襲ってきたと思うと、もう少年の姿は、見えなくなって、波は、どこかへさらっていってしまったのでした。

このことを伝えきいた浜の人たちは、その子供をかわいそうに思わぬものはなかったのです。ところが、それからというもの、月のいい晩には、かなしそうな笛の音が、沖の方から聞こえるという話でした。

「いまでも聞こえますか?」と清さんは、宿の人に、ききました。

「それが、きこえることもあれば、またきこえぬこともあります。笛の音のきこえたつぎの日は、船を沖へ出しても、漁がないということです。」と、宿の人は、答えました。

「まあ、不思議なお話ですこと、清さんも、海へ入ったら、波に気をつけなければいけませんよ。」と、お母さんは、おっしゃいました。

「あの先生がついていらっしゃいますから、だいじょうぶですし、まだ、土用波の立つ時節でもありませんから。」と、宿の人は、いいました。

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