つじうら売りのおばあさん
本文約2,100字 ・ 読了時間 約5分
あらすじ(AIが作成しました)
雪の晩、義雄の家でカルタ会に興じる子供たちは、村で噂のつじうら売りの話題で持ち切りになる。誰がその正体を見極めに行くかという話になり、カルタで負けが込んだ達夫が買い出し役を買って出る。凍てつく外へ出た達夫は、提灯の明かりを頼りに現れた黒い影に出会い、声をかける。そこで耳にした言葉に涙を浮かべながら、達夫は遠ざかるつじうら売りの背中を見送る。子供たちの好奇心と、つじうら売りの哀愁が交錯する冬の夜を描く。
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ある日、雪のはれた晩がたでした。
「きょうは、義雄さんの家のカルタ会だ。」というので、みんなは喜んでいました。
達夫くんは、おとなりのかね子さんをさそって、いくことになっていました。
入り日が、赤く雲をそめて西にしずみますと、雪のつもった山のかげがまっ黒になって見えました。いよいよ出かける時分には、雪の上がこおって、歩くとさらさらと音がしたのです。
「このあいだ、僕の家のカルタ会でお顔に、すみをぬられなかったのは、かね子さん一人だけだろう。かね子さんは、えらいなあ。」と、達夫くんは今夜また負けて、おしろいやすみをぬられるのかと思うと、なんだか自分はいつも負けて、はずかしい気もちがしました。
「達夫さん、私と組みになりましょうね。私ひとりでたくさん取るからいいわ。あんたは自分の前だけよく見ていらっしゃいね。」と、かね子さんはいいました。
しかし、達夫くんは女なんかからかばわれるのを、名誉とは思わなかったのです。
「僕、カルタには負けるけど、すもうを取ればいちばん強いんだがなあ。」と、歩きながら達夫くんは力みました。
その晩のカルタ会は、なかなかにぎやかだったのです。カルタにつかれた時分、おすしや、あまざけや、みかんや、お菓子などが出ました。それを食べてからあとは、火鉢をかこんでお話に花がさいたのでありました。
「つじうら売りのおばあさんの顔を見た人がある?」と、だれやらがいうと、たちまちその話でもちきりになりました。
このごろ、町の方から毎晩、雪のふるときも、風のふくときも、かかさずに村へはいってくるつじうら売りがあります。その声を聞いただけでは、女らしいが、なかには男だというものもあり、またおばあさんだというものもあれば、まだ若い女だというものもあって、うわさがとりどりでありました。まれにつじうらを買ったものも、ちょうちんの火でははっきりすがたさえわからないのに、頭から布をかぶって顔をかくしているというのでした。
「まだ、今夜はやってこないね。」と、一人がいうと、
「どうして今夜はこないのだろう?」