年ちゃんとハーモニカ
本文約1,700字 ・ 読了時間 約4分
あらすじ(AIが作成しました)
ハーモニカを独学で習得した少年・年ちゃんは、学校の勉強には熱中できず、試験結果も芳しくない。通信簿を抱えて帰宅した少年を家族は笑うが、ラジオから流れる名人の演奏を聴き、自分の実力を思い知る。沈黙する少年を優しく励ます母親の姿を通し、幼い少年の葛藤と、家族の愛情に触れて自ら学び直そうとする心情の変化を描く。
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年ちゃんの友だちの間で、ハーモニカを吹くことが、はやりました。はじめ、だれか一人がハーモニカを持つと、みんながほしくなって、つぎから、つぎへというふうに、買ったのであります。けれど、みんなは、それを吹き鳴らすことを覚えないうちに、やめてしまったけれど、年ちゃんだけは、べつに教わりもせずに、いろいろの歌を吹けるようになりました。
「学校のことが、そういうふうにできるといいのですけれどね。」と、お母さんが、おっしゃいました。
「いや、なんだって、上手になればいいさ。年坊は、音楽家になるかな。」と、お父さんは、笑われました。
しかし、学校のことは、ハーモニカのようには、ゆきませんでした。それだけでなく、試験が近づいてきても、年ちゃんは、遊んでばかりいるので、お母さんは心配なさいました。
「そんなに遊んでいてもいいのですか?」
そうお母さんにいわれると、さすがに、年ちゃんも心配になるとみえて、ご本を出したり、また、お姉さんや、お兄さんから算術のわからないところをきいたりして、勉強をしましたが、それも、そのときだけで、いつかまた遊んでしまったのです。
やがて、試験も終わり、いよいよ今日は、通信簿をもらうのでありました。
「どんなお点をもらってくるでしょうか。」と、お母さんと、お姉さんは、年ちゃんの帰るのを待っていられました。
すると、なにか鼻唄をうたいながら、小さなくつの足音がして、つぎに、ご門の戸が開きました。年ちゃんが、帰ってきたのです。
「ただいま。」と、いつものように、年ちゃんは、ごあいさつをしました。
「どう? 年ちゃん。」と顔を見るや、お姉さんが、おききになりました。
「ガア、ガア、いう声がきこえた?」と、年ちゃんは、いいました。
「なあに、ガア、ガア、って?」
「僕、たくさん、あひるをもらってきたから。」と、年ちゃんは、朗らかなものです。
「まあ、乙ばっかしなの?」と、こんどは、家じゅうが、大笑いになりました。
「丙がなかっただけでも、ありがたいのですよ。さあ、この通信簿をお仏壇の前におあげなさい。」と、お母さんが、おっしゃいました。