母犬
本文約1,700字 ・ 読了時間 約4分
あらすじ(AIが作成しました)
全身が黒く顔だけが白い雌犬は、その異様な外見から周囲の子供たちに石を投げられ、常に怯えながら逃げ回る日々を送る。ある日、敏ちゃんは犬が飢えに耐えながらパンを口にして持ち去る姿を目撃し、その行動に不審を抱く。後を追った敏ちゃんは、林の中で小犬のために食べ物を運ぶ母犬の献身的な姿と、我が子を守ろうとする深い愛情を目の当たりにする。この光景に触れた敏ちゃんは、偏見を捨てて母犬をいたわり、周囲にもその真実を伝えていく。
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どこから、追われてきたのか、あまり大きくない雌犬がありました。全身の毛が黒く、顔だけが白くて、きつねかさるに似て、形は、かわいげがないというよりは、なんだか気味悪い気がしたのであります。だから子供たちは、この犬を見ると、石を拾って投げつけたり、なにもしないのに、追いかけたりしました。犬はますますおどおどとして、人の顔を見れば逃げるようになりました。
ペスやポチは、みんなからかわいがられているのに、なぜ、この犬だけ、みんなからきらわれるのだろうかと、敏ちゃんは、ふと、犬を見たときに考えたのでした。自分だって、このあわれな犬をいじめたことがあるのですが、考えると、わるいことをしたような気がしたのでした。
「こんどから、僕は、もう、あの犬をいじめないことにしよう。」と、敏ちゃんは、思いました。
ところが、偶然にも、ある日、敏ちゃんのうちのお勝手もとへ、その顔だけ白い犬がやってきてのぞきました。よほど、おなかがすいていたとみえて、なにかたべるものをさがしていることがわかりました。
「まあ、なんて、気味のわるい犬でしょう。」と、女中がいって、水をかけようとしたのを敏ちゃんは、やめさせました。そして、
「まっておいで!」と、犬に向かっていいながら、奥へ入って、昨夜、食べ残してあったパンを持ってきました。
パンは、もう堅くなっていましたが、このおなかのすいた犬にとっては、どんなにかおいしいごちそうであったでしょう。犬は、敏ちゃんの、しんせつにいってくれた言葉がわかったようにじっとして、待っていました。
「さあ。」と、いって、敏ちゃんはパンの一切れを犬に投げてやりました。
犬は、喜んで食べると思いのほか、それを口にくわえると、あわただしく、逃げていってしまいました。
「それごらんなさい、坊ちゃん、まあ、なんて、にくらしい犬でしょう?」と、女中は、あきれました。
「ほんとうに、やな犬だね。」と、敏ちゃんもあんな犬に、なにもやらなければよかった、ああいう犬だから、みんなに、いじめられてもしかたがないのだという考えが起こったのであります。
「もう、きたって、なんにもやるものか。」と、敏ちゃんはいいました。