TRENDIA CLASSIC

僕たちは愛するけれど

小川未明

1 / 4

「誠さんおいでよ、ねこの子がいるから。」と、二郎さんが、染め物屋の原っぱで叫びました。

誠さんにつづいて、二、三人の子供らが走ってゆきますと、紙箱の中に二ひきのねこの子がはいっていました。

「だれか、捨てたんだね。」

「橋の上に置いてあったのを、三びきジョンが食い殺したのだ。」

「悪いジョンだね、いじめてやろうか。」と、誠さんや、正ちゃんがいいました。

「茂さんが怒って、ジョンを河の中へ突き落としたんだよ、ジョンのやつ、クンクンないて逃げていってしまった。」と、二郎さんが、告げました。

「かわいらしいね。」と、新ちゃんや、年ちゃんが、ねこの前にしゃがんで、頭をなでてやりました。

「おなかが空いているから鳴くのだろう。」

「僕、ご飯を持ってきてやるから。」

新ちゃんは、家へ駆け出してゆきました。ご飯にかつお節をかけて、おさらに入れて持ってきました。一ぴきは、小さな頭を振って食べました。一ぴきは、箱のすみでふるえていました。

「かわいそうだね。」と、誠さんが、二ひきの子ねこを見ながらいいました。

「晩に雨が降れば死んでしまうね。」

「僕たち、雨の当たらないように、お家を造ってやろうか。」と、年ちゃんがいいました。

「そんなことをしたって、だめだよ。それよりか、だれか飼ってくれないかな。」と、二郎さんが、いいました。

「だれか、飼ってくれるといいね。」と、誠さんが、二郎さんの言葉に同意しました。

「新ちゃんの家では、飼わない?」

「僕のうちでは、お母さんが、ねこをきらいだよ。」と、新ちゃんは、答えました。

「君のうちでは?」と、誠さんが、二郎さんにききました。

「僕のうちには、一ぴきねこがいるじゃないか。」

「あの、大きいきつね色のどらねこは、君んちのかい。」

「ああ、そうさ。」

これをきくと、みんなが笑いました。

「あのくりの木に、かぶとむしがいる!」

このとき、あちらで、だれかいった声がすると、みんなは、その方にかけていってしまいました。あとには、二郎さんと誠さん、二人だけが残って、子ねこをどうしたらいいものかと相談していました。

「どこかで飼ってくれないか、方々きいてみようか。」

小川未明の他の作品