正ちゃんは、やんまを捕りました。そして、やんまの羽についた、もちを取っていると、ぶるっとやんまは、羽を鳴らして、手から逃げてしまいました。
「あっ。」と、いって、その逃げた方を見送ると、よく飛べないとみえて、歩いてゆくおばあさんの背中にとまったのです。
正ちゃんは、胸がどきどきしました。どうしたら、うまく捕らえることができるだろうと思ったからです。
正ちゃんは、気づかれないように、おばあさんの後を追いかけました。いくらおばあさんでも、動いていると、知られぬように、うまく捕らえられるものでありません。正ちゃんは、ため息をつきました。しかし、勇気を出して、おばあさんのうしろへいって、手を伸ばしました。
下を向いて、おばあさんは、なにか考えながら歩いていると、だれか、たもとにさわったような気がしたので、うしろを振り向くと、どこかのかわいらしい子が、後からついてきたのです。
「へへへへ、人違いでございますよ。」と、おばあさんは、笑って、そのままゆきかけたのでした。
「だめだなあ、あんなところに、うまくとまっているんだもの。」と、正ちゃんはうらめしそうに、やんまを見つめていましたが、もう一度捕らえられるものか、やってみようと、また足音をたてぬようにして、おばあさんの後を追ったのであります。
おばあさんは、また、だれかたもとのあたりにさわったので、はっとして振り向いてみると、先刻の子供が、しつこく自分の後を追ってきたのでした。
これは、人違いでないと思いました。そして、顔に似合わぬ、なんという、いやな子だろうと思いましたから、おばあさんは、怖ろしい目つきをして、にらんだのでした。子供は、おばあさんにしかられると、そのままあちらへ駈け出していってしまったのであります。
おばあさんは、お家へ帰りました。家の人たちが、
「おばあさん、お帰んなさい。」と、いって、出迎えました。それから、「お疲れでしょう。」と、いって、羽織をぬがしてあげにかかると、やんまが、背中にとまっていましたので、
「まあ、おばあさん、こんな大きなやんまが、お背中にとまっていましたよ」と、いって、捕らえてみせました。このとき、おばあさんは、