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TORENDIA

森の中の犬ころ

本文約2,200字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

町のある酒屋で生まれた子犬を連れ、母犬は人間に見つからぬよう森の穴へ移り住む。母犬は、気まぐれな人間に捨てられた自身の経験から、子供たちに人間を信じてはならないと諭す。必死に子犬を育てる母犬は、空腹や疲れを忘れ、ひたすら子供たちの安全を願い守り続ける。ある日、小僧に一匹の子犬を連れ去られる騒動が起き、母犬は悲しみに暮れるが、やがて人間側も子犬を返し、子犬の行く末を案じる母犬の姿を描く。

小川未明

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🎧 森の中の犬ころ / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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町のある酒屋の小舎の中で、宿無し犬が子供を産みました。

「こんなところで、犬が子を産みやがって困ったな。」と、主人は小言をいいました。これも、小僧たちが、平常小舎の中をきれいに片づけておかないからだと、小僧たちまでしかられたのであります。

「この畜生のために、おれたちまでしかられるなんて、ばかばかしいこった。犬の子を河へ流してきてしまえ。」と、小僧たちは話をしました。

「そんな、かわいそうなことをするもんじゃない。目があいたらどこかへ持っていって捨てておいで。」と、かみさんがいいました。

そのうちに、小犬たちは、だんだん目が見えるようになりました。そして、よちよちと、短い、筆先のような尾をふりながら歩くようになりました。「どうか、もうすこし、子供たちが大きくなるまで、ここにおいてください。」と、あわれな母犬はものをいわないかわりに、目で小僧さんたちに訴えたのであります。けれどそれは許されませんでした。

「だれか、もらいてがあるといいんだがな。」

「警察へつれていくと、一ぴき三十銭になるぜ。君つれていかないか?」

「ばかにするない。晩に、どこかへ、リヤカーに載せて捨ててきてやろう。」と、小僧さんたちは、そんな話をしていたのです。これを聞いた、母犬は、おどろきました。なぜなら、たとえしんせつそうに見える人間でも、そうしたことをやりかねないからです。

「私も、はじめは、何不自由なく、かわいがられたものだ。それを、どういうわけか、いつからともなくきらわれて、私は、ついに、おいてきぼりにされて、飼い主は、どこへかいってしまった。私は、いまでも、その人たちをなつかしく、慕わしく思っているばかりでなく、ご恩を受けたことを、けっして忘れはしない。けれど、こんなことがあってから、人間を信じていいものかわからなくなった……。」と、母犬は考えました。

母犬は、だれにも、気づかれない間に、小犬たちをつれて、そこからほど隔たった、ある森の中に引っ越してしまいました。

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