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TORENDIA

トム吉と宝石

本文約4,200字 ・ 読了時間 約9分

あらすじ(AIが作成しました)

宝石店で働くトム吉は、病気の弟を持つ娘が持参したルビーの指輪を正当な相場で買い取る。その正直さを店主に咎められ解雇された彼は、旅の途中で道連れの若者が拾った価値ある曲玉を騙し取ろうと画策する。しかし曲玉は海に消え、若者と別れたトム吉は自らの卑しい心と強欲を深く悔いる。改心した彼は、姉のために尽くす決意を胸に、改めて正直に生きる道を歩み始める。

小川未明

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🎧 トム吉と宝石 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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遠い、あちらの町の中に、宝石店がありました。

ある日のこと、みすぼらしいふうをした娘がきて、

「これを、どうぞ買っていただきたいのですが。」

といって、小さな紙包みの中から、赤い魚の目のように、美しく光る石のはいった指輪を出してみせました。

ちょうど、主人の留守で、トム吉が手にとってながめますと、これほど、性のいいルビーは、めったに見たことがないと思いましたから、しばらく感心して、掌にのせてながめていました。

娘は、小僧さんが、なんというだろうかと、さも心配そうな顔つきをしていました。

(もし、これが、いい値に売れなかったら、病気の弟をどうしたらいいだろう。そればかりでない、明日から私たちは食べてゆくことができないのだ。)

と、いろいろ思っていたのです。

「この指輪を、どこでお求めでございましたか。」と、トム吉は、たずねました。

すると、娘は、正直にその指輪について話したのです。

「それは、死なれたお母さんが、お祖母さんからもらって、大事になさっていたのを、お亡くなりなされる時分、指からぬいて、これはいい指輪だから、よほどのときでなければ、はなしてはいけないとおっしゃって、私にくださったものです……。」

と、娘は、いまの不自由をしていることまで、物語りました。

トム吉は、だまって、娘さんのいうことをきいていましたが、

「じゃ、弟さんがご病気で、この大事になさっている指輪をお売りなさるというのですか。」

と、たずねました。

娘は、かなしそうに、目にいっぱい涙を浮かべながら、うなずきました。

「いや、まことにけっこうな石です。」

といって、トム吉は、真物の相場どおりに高値で買ったのでした。

娘は、いい値に指輪が売れたので、たいそうよろこんで、これもお母さんのおかげだと思って、はやく弟の治療をするために立ち去りました。ちょうど、それと入れちがいに、主人がもどってきました。

トム吉は、主人の顔を見ると、

「こんな性のいいルビーが出ました。」

といって、娘から買った指輪を見せたのであります。主人は、眼鏡をかけて見ていましたが、

「なるほど、珍しい、たいした代物だな。」と、微笑みながら、

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