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TORENDIA

都会はぜいたくだ

本文約4,000字 ・ 読了時間 約8分

あらすじ(AIが作成しました)

都会へ奉公に出たおかねは、デパートに並ぶ高級品や遠方からの名物に驚きつつ、田舎で命がけで魚を釣る弥吉じいさんの苦労に思いを馳せる。奥さまから勧められた甘い酒を口にし、眠りの中で懐かしい昔の記憶と故郷への郷愁に駆られたおかねは、翌朝には夢の内容を忘れ、再び明るく働く姿を描く。

小川未明

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🎧 都会はぜいたくだ / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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デパートの高い屋根の上に、赤い旗が、女や子供のお客を呼ぶように、ひらひらとなびいていました。おかねは、若い、美しい奥さまのお伴をしてまいりました。

そこには、なんでもないものはありません。みるもの、すべてが、珍しいものばかりでした。

東京へ出てきてから、奥さまにつれられて、方々を歩くたびに、田舎のさびしいところで働いて暮らす、お友だちのことを思わぬことはなかったのです。

「おつねさんなんか、こんなにぎやかなところは知らないのだ……。」と思うと、青々とした田圃の中に立っている、友だちの姿がありありと見られました。

千円、二千円という札のついた、ダイヤモンドの指輪が、装飾品の売り場にならべてありました。それを見ただけでもびっくりしたのです。また、食料品を売っている場所には、遠い西の国からも、南の国からも名物が集まっていました。そして、それにも高い値段がついていました。

「まあ、こんな高いものを、東京には、食べる人があるのだろうか?」と、疑われたのであります。

「おかねや、おまえの国の名物には、どんなものがあって?」と、奥さまは、ふりかえって、聞かれました。

おかねは、なんだろう? と思いました。小学校にいる時分、地理の時間に、自分の国の名産をいろいろ教えられましたが、この東京にまで出されているような名物は知らなかったのでした。

「わかりません。」と、耳を赤くしながら、答えるよりほかなかったのです。

見て歩くうちに、相模川のあゆや、八郎潟のふなまで、ならべられてありました。

「まあ、川魚までが、方々から、汽車で送られてくるのかしらん。」

このとき、彼女の頭に、弥吉じいさんの顔が浮かびました。じいさんは、川魚をとって生活したのであります。どんな暗い雨の降る晩も出かけてゆきました。なんでも、青いかえるを針につけて、どろ深い川で、なまずを釣り、山から流れてくる早瀬では、あゆを釣るのだという話でした。

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