TRENDIA CLASSIC

珍しい酒もり

小川未明

1 / 7

北の国の王さまは、なにか目をたのしませ、心を喜ばせるような、おもしろいことはないものかと思っていられました。毎日、毎日、同じような、単調な景色を見ることに怠屈されたのであります。

このとき、南の国へ使いにいった、家来が帰ってまいりました。なにかおもしろい話を持ってこないかと、さっそく、その家来にご面会になりました。

「ご苦労だった。無事にいってこられて、なにより、けっこうのことだ。南の国王は、達者でいらせられたか……。」と、おたずねになりました。

家来は、長い旅をしたので、顔の色は、日に焼けて、頭髪は、雨や、風に、たびたび遇うたことを思わせるように、伸びて乱れていました。

「南の国王は、お達者でいらせられます。そして、毎日、愉快にお暮らしになっていらせられます。帰ったら、よろしく申しあげてくれいとの、お言葉でありました。」と、家来は、申しあげました。

北の国の王さまは、うなずかれてから、

「それは、けっこうなことだ。しかし、ほんとうに南の国王は、愉快に日を送って、おいでなされるか?」と、問いました。

家来は、両手を下について、

「毎日、それはそれは愉快に、日を暮らしていらせられます。南の方は、こちらよりは、ずっと日が長いように思われますが、それでも、国王は、短いといって、嘆いていられたほどであります……。」と、お答え申したのでした。

北の国王は、不思議のように思われました。自分には、どうして南の国のような、楽しいことがないのだろうかと、かなしく思われたのでした。

「自分は、明けても、暮れても、この単調な景色を見るのに飽きてしまった。やがて、広い野原は、雪におおわれることであろう。どうして、自分には、そうしたおもしろいことがないのであろうか?」と、おっしゃられました。

家来は、王さまの顔を見上げながら、

小川未明の他の作品