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TORENDIA

どうしたら私は憐れな彼女を悸さずに済せるだらう

本文約590字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

望遠鏡製作所に勤める友人と共に、変則的な眼鏡の設計に没頭する。完成した眼鏡は窓から突き出すと鉄砲の筒先のように見え、遠くの景色を詳細に見るための仕掛けを備えている。製作が進む中で、窓の外の棕櫚に棲む梟の存在を意識した語り手は、自らが完成させようとしている眼鏡によって、その存在を驚かせてしまうのではないかという不安に駆られる。独り身の生活の傍らにある梟との関係と、完成を待つ眼鏡への執着を描く。

牧野信一

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🎧 どうしたら私は憐れな彼女を悸さずに済せるだらう / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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或望遠鏡製作所に居る友達を私は頻りに訪れてゐる、私は或望遠鏡を彼に依頼したのである、その眼鏡の構造を此処に述べるのは大変だから省かう。

どうせ忙しい友達が仕事の合間を見計つて徐々と組み立てるのだから何時仕上るか解らない、彼と私と共同で設計した少々型ちの変つた眼鏡でウマク行けば今の私にとつては得難い侶伴になる筈だ。――私達は静かに亢奮してギンザ裏のバーを次々に工房に変へて行つた。彼のポケツトからはコンパスや鉛筆や定規などが煙草の間もなしに出し入れされるのであつた。私は紙挟みを開いて、ケント紙に線を加へ数字を記入しながら、滅多に眼ばたきもしなかつた。

――独りの部屋に帰つて窓先きを眺めてゐると棕櫚の樹の葉蔭に何時もの梟が来てゐる、誰も悸す者がないので彼女は明方になると其処に戻つて来て終日のネグラにしてゐる、或日の夜明け時に飛び帰つて来る姿を私は一度見たこともある。――私の眼鏡が出来上ると憐れな彼女は私の窓に悸かされはしないだらうか? と私は怖れた、そんなことは今迄忘れて友達との設計のみに没頭して来たのだつたが! 私の窓から突き出るであらう遠眼鏡は鉄砲の筒先きに似てゐる、伸し切ると細くステツキ程の長さになるのだ、樹々の間をすかして海を見降すには如何してもステツキの長さに伸し切らないと渚の人達の顔の判別はつくまい。

棕櫚の梟がこの二三ヶ月の間どんな親しい言葉を私に囁いて来たかは省かう。

完

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