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TORENDIA

珠玉の如き

本文約530字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

山門をくぐり奥深い芸術の殿堂へ至る道筋と、そこにある主の房の情景を綴る。複雑な回廊を抜けた先には、常に静かに瞬く二つの眼光と一つの芸術の光が存在する。葛西善蔵の苦悩を通じて「苦闘なきところに芸術なし」という厳かな信念を示し、作者の魂が宿る珠玉の光がいかにして後世の訪者に輝き続けるかを論じる。

牧野信一

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🎧 珠玉の如き / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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奥深い芸術の殿堂であつた。

山門をくゞり、径道をのぼつて、堂のほとりに達すると、常緑樹の翠の香が煙りの如く漂ふてゐた。

薄暗い廻廊を幾曲りして、(おゝこれは何といふ手のこんだ誤り易い、困難な、そして厄介な廊下であることよ。訪者は、ムカツ肚をたてゝ引き返すことがある、疳癪の舌打ちをして引き返すことがある、道に迷つて逃げ出すことがある……)漸く主の房に達すると、訪者は、三ツの光りが雨の日も風の日も、一抹の揺ぎもなく、静かに瞬いてゐるのを見た。――二ツの光りは、主人の眼光であつた。そして、一ツは主人のあらゆる努力をもつて、身をもつて、燭し続けられてゐる芸術の光である。……この殿堂の主は、人の世の多くの苦悩を、短き間に知り尽し、no Struggle, no Art! ――の厳たる珠光を示した。(ストラツグルのなきところにアートなし。)

今や主人の眼光は消え去つたが、永遠に生けるが如く、彼の珠光は益々光の翼をのべて、不断にいつまでも輝き、多くの訪者になつかしまるゝであらう。――惜しくも、彼の稀なる九折の回廊も共に消え去せたが、吾等は、常緑樹の翠の香が煙りの如く漂ふうちに――何時、何処でゞも、居ながらに、直ちに彼の悉くの珠玉の光りに接し得らるゝ――。

葛西善蔵全集・三巻で――。

完

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